―小学校では教えてくれないことですね。

値段が高すぎたら買う人がいないとか、そういうことは学校では教えてくれないんで。社会に出て生きるようなことを、自分なりに噛み砕いて伝えようとしています。

―自分の感情もくっついて理解しますもんね。「残念！がっかり、こうなっちゃったんだ、、、」って（笑）。

教えてもらうより気づくほうが大事ですから。あと、先日は子どもと近所の新興住宅街を走りながら「お金をいっぱい稼いでいる人のお家はどこにあると思う？」って質問しました。そしたら「ここらへん。お家が大きいしきれいだから」って。「そういうお家の人ってどんな仕事やってんの？」って訊くと、このあたりは友達が住んでいるらしくて、大学の先生とか東京の大きな会社に行っているとか言うんです。子どもからすると、勉強してきた人たちがそういうふうになるんだってイメージができますよね。今度はつくば市の中で一番級に大きなお家があるところに連れて行くんです。ひとつはこのあたりで複数店舗のドラッグストアを経営されている家、もうひとつの家は近所のスーパーにも入っている焼き鳥屋さんの家なんです。「さっきのお家よりも、こっちのほうがお家が大きいのはなんでだろう？」って子どもに訊くんです。子どもからすると、なんで大学の先生とか東京の大きな会社で働いているお家よりも焼き鳥屋さんのほうが大きいんだろうと。「自分で仕事をするっていうことはこういうことなんだよ。仕入れて売ったときの儲けたお金が全部自分のものでしょ。会社で働くというのとはそこが違うんだよ」って。そういうことをひとつひとつ教えています。

―そういう勉強の題材は、その都度考えるんですか？

日頃から書いてるんです。“働く”ってことについて、こうやったら伝わるかもしれないと思いついたものを。こういうことは、うちの子どもだけじゃなく学校でやったらいいいんじゃないかって思うんです。

―たしかに。ちなみに“働くとは“という題材が多いんですか。

そうですね。あとは悔しいって思うことや、親のつらさみたいなことをどう伝えようかとか書いています。

―親としてのつらさを書いているんですか。例えば？

これはたくさんお母さんも感じることだと思うんですけど、仕事でぶるつかる壁とか仕事とのバランスとか、そういうところで感じる苦労のようなことを書いています。でも、子どもは今見なくてもいいんです。読んでも分からないので。ただ、今、私が伝えたい気持ちはその時に書いておこうと。それで手紙を書くようにしたんです
「4歳の○○へ」って。
手紙を書いたら重ねておくんです。それで、子どもがたとえば中学生になったときに読んでもらえればと。自分が4歳のときにお父さんとお母さんがどんな想いだったかを。これは上の子が4歳のときからやっていることですね。

―なるほど、その瞬間に思ったことを数年後に伝えるということですね。

はい。過去にどう感じていたのかっていう親の想いを知るというのは、本人が何か壁にぶつかったときに突破する上で大きなことなんじゃないかと。そういう壁に対して、私が直接何かをしてあげられることはないと思っているんです。本人がその時々に何をどう感じて行動するかということが大事だと思っています。そういえば上の子は小学2年生まで全く勉強しなかったんですよ。一時期は、勉強をさせようって話を妻ともしましたけど、やりたいと思っていないのに「やれよ」と言っても続きませんから。でも、どこかの瞬間にスイッチが入ったんです。「オレ勉強する」って言い出して。「無理しなくていいんだよ」と言ったんですが（笑）。やる気スイッチが入ってからは圧倒的に楽しそうにやっています。その子のスイッチを入れてあげることができたら、教育って変わるんだなと思います。ただ、スイッチはよく押し間違えますけど（笑）。

今回の"オトン"なビジネスマンは、

赤尾雄司さん

トレンダーズ株式会社　
岐阜県 可児市出身。
家族構成：妻、息子（小5）、息子（小2）