―社会というものを教える役ですね。

家族からすれば、子どもが思春期を迎える、これから就職をするという時に、この人が必要だと思うようになりますので。そこに結構早いうちに気づいて、舵をそっちに振り切ったんです。だから仕事でもいろんな企業の名刺を持つようにしていて、肩書きが10種類以上あるんです。おやつの会社とかIT系とか、店舗開発とか、格闘技の後援会の名刺とか。できるだけたくさんの企業等と関わりを持っている。そういうことを奥さんにアピールするようにしたら、子どもが社会に出ようとするときの相談相手として、必要なんだと見てもらえるようになりました。奥さんのお姉さんの子ども、つまり姪っ子が大学に入ったんです。でも医学部ではなく。姪っ子の両親もお医者さんなので、それ以外のアドバイスができないんじゃないかと。そこで何かあったら鈴木くんに相談だ、ということになればいいなと。

―なるほど、そうすると奥さんと子どもだけでなく、一族と社会をつなぐ窓口という役目を担っているわけですね。

そうですね。常に一族という意識は持っています。この一族の中で自分の役割は何なんだと。それに気づくことができなかったら、上手く行かなかったと思います。絶対にお互いの権利の主張とかでかち合いますから。だから僕はお金の使い道、財産的な話は絶対に口を出さないと決めたんです。子どもの学校のことも口を出しません。上の子が受験するとかしないとかの話は僕の知らないところで決まるんです。でもそれを教えてくれとは言わないです。でも役割分担に気づく前だったら、僕は言ってたと思うんです。なんか言われるたびに、お前だって全然伝えてこないじゃん、子どもに興味持てとかいっても伝えてこないじゃん、通信簿見せてこないじゃんとか、そうやってかち合うことがあったんだろうと思いますけど、そういうことが今はないです。

―夫婦仲は円満ですか？

仲がいいです。それは役割を意識して以降のことですね。上の子が3歳くらいの時です。それまでは、無意識にですが、先ほど話したように、お互いの主張があったんだと思います。奥さんからすると「もっと宮城に来る回数を増やせ」とか、こちらも、「いや、俺にも仕事がある！」とか。こっちは子どもの世話をしているんだとか。でも俺だって頑張っているんだって感じです。でも気づいてからは、“俺だって頑張っているんだスタンス”をやめました。奥さんの考えていることはその通りだと全面的に受け入れるようになったんです。そこから変わっていきました。奥さんもことさら権利を主張することもなくなりました。

―他に決めていることってありますか？

子どもにどこか悪いところがあったら、それは僕に似たせいだということにしています。優秀なところはお母さんのおかげ。悪いところはお父さんのせい。それとやっぱり、絶対にはぐらかしたり、子ども扱いしたりしないということですね。映画“七人の侍”で名台詞があって「子どもは働くぞ、子ども扱いしなければな」という。ああ、これはそうだなと思いました。

―娘さんが東京に来ることはありますか？

単独では今はまだないですね。僕のとしては、来てほしいとか来てほしくないとか、そういう役割以上の意思は持たないようにと決めているんですけど、向こうは今後、そういうことがあってもいいと思っています。社会勉強のために。こちらに来たら僕がいろいろなことを教えるというのを知っているので。いずれやってくる娘の社会勉強の時のために、今、僕はここに配置されているという感じです（笑）。

今回の"オトン"なビジネスマンは、

鈴木忍さん

株式会社ニンニンドットコム 代表取締役
秋田県出身。
家族構成：妻、娘（小6）、娘（小3）