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子どもに伝えたいこと、そうですね。「雨が降ってもオマエのせいだよ」と。
IT企業経営 東京都世田谷区在住 西田 祥さん(39歳)
家族構成:妻、息子(高1)、娘(中1)、娘(小5)、息子(小3)、娘(年長)、息子(3歳)
“オトン”なビジネスマン、第6回は、IT会社を経営する西田 祥さん(39歳)です。なんと6人のお子さんがいる8人家族。「子どもが増えるたびに気づくことがあるんです。」と語る西田さんは、2番目の子に対しては「えこひいき」なんだとか。
聞き手:oton+to編集長 布施太朗
―今の時代、お子さん6人というのはすばらしいですね(笑)。
あははは。もともと3〜4人は授かりたいなと思ってはいたのですが、気がつけば6人になっていました(笑)。出産は女性にとって、とても大変なことです。長い間子供をお腹に抱え、不自由を余儀なくされますし、産むときは、激痛でしょうしね。産まれた後も、幼児には手間がやたらと掛かるので、とにかく大変です。だから「もう産まなくていいよ」とその時は思うんですけど、産まれてから2年くらい経つとやっぱり小さい子どもは、かわいいなって。そうなってくると、家内と「もうひとりいてもいいよね」という繰り返しで子供が増えていきました(笑)
―そんな西田さんの子どもの頃のお話を訊かせてください。
私は、日台のハーフとして台湾で生まれました。ハーフなので、父は日本人なんですけど、普段から中国語で話をしていたので、小さい頃、自分は台湾人だと思っていたんです。しかし、現地の小学校では戦争について学ぶのですが、それをきっかけに苗字が「西田」なので、日本人だとよくいじめられたり、からかわれましたね。でも、自分が日本人だという自覚はなく、父から「明日から日本人学校に転校だ」と言われた時に、初めて自分が日本人なんだと理解しました。日本人学校へ転入した小学2年生から日本語を覚え始めたんです。
―日本人学校に転校されてからはどうでした?
これはこれでまたキツいんです(笑)。とにかく日本語がしゃべれないから・・・。授業中に先生が何を言っているのか、まったくわからないんですよ。勉強はついていけなくなるし、同級生とコミュニケーションも取れないので、今度は台湾人と馬鹿にされますし・・・。さすがに、この辺りからグレはじめて、ヤンチャをするようになっていきました。
―台湾にはいつまでいたのですか?
中学3年生までいました。現地に日本人向けの高校がないので、帰国するしか選択肢がありませんでした。日本に行っても住む処もないので、先生に勧められた全寮制の男子校に入学しました。この高校が、とにかくすごいんですよ。偏差値39ですよ(笑)入学試験のときに、隣の子が名前だけ書いて、あとはずっと寝てたんです。でも入学式のとき、その子、隣りにいましたからね(笑)。親御さんが、どうにもできない子を預かっているような学校だったんです。同学年で入学したのが200人で、卒業したのが100人です。退学100人みたいな(笑)そんな高校でも、振り返ってみれば、結構楽しかったんですよね。
―へえ!そんな高校生活は何が楽しかったのですか?
何が楽しかったかって、この偏差値39の高校では、グレてた私でも、頭が良い部類に入ることができるんですよ。運動も比較的得意だったので、この高校では私みたいなのでも文武両道に見える(笑)台湾にいたときは体育と美術以外、成績が1でしたから。だって小学2年生から急に授業の言語が変わってしまったから、授業についていけなくなりましたし、台湾の小学校の同級生は大体が大手エリートサラリーマンの子供ばかりです。みんな出来る子ばかりで、中学生で英検2級とるような子供が結構いましたからね。帰国したら慶應・早稲田とか受けるんですよ。小中学校生活はそんな環境でしたから、偏差値39の高校に入学して「西田おまえ、勉強も運動もできて天才だな」って言われる環境に浮かれてました。高校3年生の成績はオール5ですし、神童扱いですよ!大学受けるとき、先生から呼び出され「オール5で内申出すのはウソくさいから、体育だけ4にしとくぞ」とか言われて(笑)。そういう意味では、高校のみんなからすごく自信をつけさせてもらいました。この自信をつけるということは、私の子育てにも繋がってくるんですけどね。
―子どもに自信をつけさせるってことですか。詳しく訊かせてください。
そうですね。ウチ、子供が多いじゃないですか。いつも家内が自転車で、子どもたちを保育園に送るんですけど、自転車には子供二人しか乗せることが出来ないんですよね。でも、子供は3人いるので、一人は乗れないんです。乗れないから大きい子は自転車の後ろから1㎞ぐらい走るしかないんです。毎日ですよ(笑)だから持久走とかすごく速いんですよ。ウチの子供たちは、大会で3位以下をとったことないですね。去年も小学生3人は1位、2位、2位という結果でした。この経験は子供たちの自信に繋がる成功体験です。
―お仕事の内容を教えてください。
システム開発と子供・大人向けのプログラミングスクールを運営している会社を経営しています。創業は2004年ですが、創業前は前職の会社の独立支援制度を使って準備会社をやっていました。それが2001年なので23歳のときです。
―現在高校1年生のご長男が生まれた、まさにその頃ですね。
はい。準備会社作った、結婚した、長男生まれた。と一気に色々なことが始まりました。まぁ大変でしたよ。もう1回やれと言われると、やりたくはないですね。当時、後先考えないアホだったから出来たんであって・・・(笑)
―かなりお忙しい時期だと思いますが、育児は?
私はその頃、何もやってないです・・・。ずっと会社、業後は営業活動で外で飲んでるわけですから。旦那らしいことを全くやっていないし、父親という自覚が全くありませんでしたね。どちらかというと仕事と夜の繁華街(笑)。
―奥様、不満爆発とか?
ちょいちょい、あったんだと思うんですけど、私のほうが気にしていませんでした。「手伝ってよ」とは言われていたと思うんですけど、それ以上に家に帰っていませんでしたし。
―お休みの日は?
その頃は、家で寝ていましたね。1週間、色々な闘いに疲れたので、「寝ている俺の邪魔すんな」みたいな感じでした。実は私、すごい亭主関白だったんですよ。
―ということは、奥さんは 3歩下がってという感じ?
子供が少ない当時は家内もそういうところがありましたね。
・・・ただ今の家内は無敵ですよね。6人の子どもの母ですから。三国志でいうと呂布(りょふ)です(笑)。
―そして3つ違いで長女が生まれるんですね。
はい、でもその頃も忙しかったですね。上海の会社を作っていまして3ヶ月休みなしとかの状態でした。だから相変わらず、家のことは何もしないという感じでしたね。
―なるほど。でもその後、どうやって父親になっていくんですか?
父親の自覚というか、長男がちゃんと会話が出来るようになってきた頃ですかね。6~7歳くらいだったと思います。きっかけがあったんです。長男と一緒にお風呂に入っていたときに、「パパ、せんそう(戦争)ってなに?」と急に聞かれたんです。私は考えて「国と国がね」というと「くにってなに~?」と。「えっと、境界線っていうのがあって、、、」「きょうかいせんってなに?」と。あれれ? 私まったく、相手が分かるように説明できないじゃん。そのときにすごく考えさせられた記憶があります。お母さんとお父さんのやることに明確な違いがあって、この先のモノゴトを理解させるのは、お父さんの役目なんだと思いました。そこからですね、私も父親らしくというか人間らしくなっていったのは(笑)。それと同時に 経営者の自分が社員と交わしている会話も同じだと気が付きました。自分が理解している言葉と、社員が理解する言葉とは別なんだと思いました。「おっ、これは仕事にも使えるぞ」と。子育てには経営のヒントが結構ちりばめられてます。子育てから学ぶことがたくさんあるんだと、とんだ副産物でした。
―つまり、仕事も子育ても本質的に同じようなことがあるんですね。子育てと仕事のバランスはどうされたんですか?
バランスをとるというよりは・・・基本、公私混同のスタンスですね。退社時間が来たら、スパッとオフモードって話とかありますけど、そんなにきれいに区切れるほうが私には不思議です。人って心が思想を作っていて、思想が行動を作っていますよね。その行動が仕事であったり、趣味であったり、家庭であったり、そもそも原点は一つじゃないですか?その心を無理に分離させようとするから、現代人は心が病むんだと思います。役者でもあるまいし、オンとオフで演じ別けられるなんてこと出来ませんよ(笑)
―それで、子どもが6人、会社を立ち上げて16年という今があるんですね。
私はすごくラフで、悪い言い方をすればいい加減です。周りの経営者から「あれでよく会社潰れないよね」ってよく言われます。終いには「渋谷の奇蹟」だとか(笑)。経営者って人格者でなければいけないとか、カリスマであるとか、品格が必要とか、公正公平とか、率先垂範とか・・・ こうじゃなきゃいけないって像がありますよね。私、ないんです。無くしたんです。社長4~5年生のころまでは舐められたくないので、頑張って、見栄張ってましたけど・・・結局、中身が無いので、お客様にも、社員にも見透かされちゃうんですよね。要するに、本質的じゃないところを、いくら気張っても、誰も相手にしてくれないですよ。しかも、見栄を張っているいるうちは、自分と向き合わないから、成長しないですしね。子供って何もできないじゃないですか? 何もできなくても、素直だし、一生懸命だから手伝いたいって思いますよね。そんな、子供たちを見てたら、私も「ありのままでいこう!」そう思えるようになったら、かなり楽になったんですよね。
―ということは、まわりからの期待も意識しない?
私は意識もしないですし、まわりに勝手な期待を押し付けないようにしています。身勝手な期待ほど最悪なことはありませんから。子育てにも通じることだと思います。例えば、子供が一人しかいなかったら、両親の期待ってその子供へ一身に背負わせることになりがちですよね。「あなたはもっとこうじゃなくちゃいけない!」そんなふうに押し付けたら、期待が高い分、減点方式になってしまいます。やる気にさせるためには加点方式でやってあげないと。特にお母さんという生き物は他の子供と比べちゃう。他の子どもと比べて「あの子はできるのに何であなたにできないの?」って。そうすると「オレはダメだ」になっちゃう。期待しちゃだめなんです。できないというのが前提でないと。「これわかる?」「わかんない」「そうだよね。じゃあどうやったらわかるか、一緒にやってみようよ」という立ち位置に行くのが大事。期待しちゃうと、なんで出来ないんだって怒りたくなっちゃうから。これ、昔社員に対して思っていたことです(笑)。
―期待するとそのギャップに腹が立つんですね。
期待して出来なかったときってそうなりますよね。期待していて裏切られたら、じゃあ一緒にやろうかにはならない。でも、一緒に考えてあげたり、やってあげたりするとその子は成長します。親が命令者ではなくフォロワーになるんです。命令者のもとでは、なにごともやらされ仕事になるんです。そうすると成長しません。
―命令者型の経営者は多いと思いますが。
いますいます、山ほどいます(笑)納得感のない仕事を社員に強要するとパフォーマンスは出ませんよね?仕事だから、命令だからで仕方ないという妥協は作れても、納得を作ることはできないですからね。
私は子供が増えるたびに、こういうことに気が付くようになっていきました。子供それぞれ個性が違うし、考えや心境が違います。その子の目線で話をしてあげないと、納得は作れません。
だから子供を6人くらい産んだらわかるよって教えてあげたい(笑)。少子化も止まるしね。
―お子さんによってアプローチの仕方は違うんですか?
違いますね。それぞれに1対1の関係です。あっ、家内は違いますよ。家内は家族に対して一色端です。1人にキレれば全員にキレますから(笑)。流れ弾に全員が撃たれる感じですね。そんなときは「今、触ったら絶対みんな撃たれるからな」って子どもたちで注意し合います。
今回の"オトン"なビジネスマンは、
西田 祥さん
株式会社スピードリンクジャパン 代表取締役
台湾出身。
家族構成:妻、息子(高1)、娘(中1)、娘(小5)、息子(小3)、娘(年長)、息子(3歳)
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