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お父さんの絵本ガレージ
2021.12.23
お父さんの絵本ガレージ 非認知能力を育む絵本 「レジリエンス」編
2020年春から継続中の、非認知能力を育む絵本シリーズ。現在、非認知能力には世界の注目が集まり、日本の新たな学習指導要領にも、幼児・学校教育を通じて育むべき力のひとつに、非認知能力(学びに向かう力・人間性など)が提唱されています。IQなどで表現される「認知能力」と、やる気や根気強さなど学びに向かう姿勢の土台となる「非認知能力」。これらをバランスよく身につけることが、教育界における大きな関心事となっているのです。
この非認知能力には様々なものがありますが、今回のテーマは「レジリエンス」。日本語では、逆境や困難から「立ち直る力」のことを言い、「回復する力」、「折れない力」とも表現されます。専門家によれば、立ち直る力を身につけるとストレスへの対応が上手くなり、立ち直る経験を積めば積むほど自信もついて、しなやかに生きていく心を育めるそう。筋肉のように自分自身で鍛えられる力と言われています。
非認知能力について言葉だけで説明するのは難しいですが、幼い子にもわかりやすくやさしく伝えられ、親自身も子どもの気持ちに寄り添いながら理解するのに役立つツールとして、絵本を開いてみませんか?何より絵本は、親子いっしょに楽しみながらくり返し読めるところが、大きな魅力ですね。主人公の気持ちに共感したり、新たな考え方にふれたりしながら、レジリエンスについて考えられる5冊を選びました。
① 『ちびゴリラのちびちび』
作:ルース・ボーンスタイン 訳:いわた みみ 出版社:ほるぷ出版 発行日:1978年
対象年齢:2歳くらい~
自分を好きになろう
家族や仲間の愛情に包まれて
「ちびちびが うまれたそのひから みんなは このちびゴリラが だいすきでした」。お母さんやお父さん、おばあさんにおじいさん、チョウやオウムや、ヘビにキリンにゾウ……家族だけでなく森の仲間たちもみんな、ちいさなゴリラが大好き。ちびちびは、多くの愛情に包まれてどんどん大きくなっていきます……。
1978年刊行のロングセラー。本文の中には「だいすき」という言葉がたくさん登場します。絵本を読みながら、わが子に「だいすき」を何度も語りかけてあげられる1冊です。お父さんの温もりを感じつつ繰り返しきくその言葉は、レジリエンスの前提として大切な「自己肯定感」を、じっくりと着実に育んでくれることでしょう。ゴリラが好きという作者が描いたちびちびは、どのページでも表情豊かで、みんなに愛され成長していく安心感が伝わってきます。
② 『よかったね ネッドくん』
作:レミー・シャーリップ 訳:八木田 宜子 出版社:偕成社 発行日:1969年
対象年齢3歳くらい〜
くり返す「よかったね」
ポジティブでいこう
ある日、ニューヨークに住むネッドくんに、びっくりパーティーの招待状が届きます。よかったね。でもたいへん!会場は遠いフロリダ。よかった。友達が飛行機を貸してくれた。でもたいへん!飛行機は途中で爆発!さてネッドくんは、無事にパーティ会場にたどり着くことができるのでしょうか……!?
テンポのよい言葉でスピーディーに展開していく物語に、子どもも大人もハラハラドキドキ。運のいい場面はカラーページで、運の悪い場面はモノクロページで描かれ、視覚的にもネッドくんの状況がわかりやすいよう趣向が凝らされています。作者のレミー・シャーリップは、俳優やダンサー、舞台監督としても活躍した多彩な人。観る者を引き込むドラマチックな表現は、刊行から50年以上たった今も色褪せません。前向きな気持ちになれる「よかったね」のくり返しは爽快で、最後のオチもお見事!親子連れの集まりで読むと盛り上がり、お父さんからの人気も抜群です。
③『すえっこ おおかみ』
文:ラリー・デーン・ブリマー 絵:ホセ・アルエゴとアリアンヌ・デューイ 訳:まさきるりこ 出版社:あすなろ書房 発行日:2003年
対象年齢:3歳くらい〜
いつかきっとできるようになる!
お父さんの愛情と包容力
主人公は、4匹きょうだいの末っ子おおかみ。お兄さんやお姉さんと自分を比べては自信をなくし、いっしょに遊ぶことができません。お兄さんのようにまっすぐ転がれないことを嘆いていると、お父さんが言います。「ともかく いっぺん やって みせてごらん」。確かに曲がりくねりながら転がっていくのを見て「それで いいんだ。まっすぐ ころがるのは、おおきくなってからだ」。末っ子おおかみは安心して、もう一度挑戦してみます……。
お兄さんやお姉さんと比べて、まっすぐ転がれない、はやく走れない、高く飛び上がれないことを思い悩む、末っ子おおかみ。お父さんおおかみは、そんな繊細な気持ちをどっしりと受けとめ、おおらかな言葉でくり返し勇気づけるのです。すると、末っ子の表情はどんどん明るくいきいきと!折れない心を育てるには「失敗しても大丈夫、いつかきっとできるようになる」と、愛情いっぱいに励まし続ける存在が必要だと考えさせられます。父子のやりとりに心温まる絵本です。
④『ねこなんて いなきゃよかった』
文:村上 しいこ 絵:ささめや ゆき 出版社:童心社 発行日:2019年
対象年齢:6歳くらい~
「泣こうか」
悲しみとゆっくり向き合う
ねこのももちゃんが死んでしまった。クラスのみんなは、一所懸命なぐさめてくれた。私は強がって言った。「はじめから、ねこなんて いなきゃ よかった」。夜ご飯を食べているとき、お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、ももちゃんのことを考えて黙り込んでしまった。するとお母さんが「なこうか。かなしいのは あたりまえ。くるしいのも ふつう。つらいのも みんな おんなじ。さあ みんな、なきましょ」。家族それぞれがももちゃんとの思い出を話し始めると、涙が溢れてきて……。
大切な存在を失ったとき、悲しみにふたをしても、心の傷は癒えません。悲しみは愛しみ。愛した記憶を誰かと分かち合うことで、ゆっくりと悲しみを受け入れ向き合うことができるのかもしれません。レジリエンスを育む過程が、ぎゅっと凝縮された物語。難しいテーマではありますが、言葉と絵から温もりを感じるのは、作者のお二人がともに愛する猫と暮らしているからこそ。命の愛おしさや尊さが、幼い子にも伝わる絵本です。
⑤『かいじゅうたちは こうやってピンチをのりきった』
作:新井 洋行 監修:森野 百合子 出版社:パイ インターナショナル 発行日:2021年
対象年齢:4歳くらい〜
絵本作家×ドクター
不安やこわい気持ちと仲良くなるには
高いところ。注射。暗やみ。みんなの前で話すこと。かいじゅうたちにも、それぞれこわいものや苦手なことがある。これまでいろいろな方法でピンチを乗りきってきたけれど、それって「ただ にげちゃった だけじゃない?」。4ひきのかいじゅうたちは考えた。こわくなるときは、必ずゾワゾワしたやつが来る。わかったぞ。全部ゾワゾワのせいだ!ゾワゾワ出てこい!
絵本作家・新井洋行さんが、自身の経験をもとにしながら、精神科専門医の森野百合子さんとタッグを組んで作った絵本。不安や恐怖との向き合い方、ゾワゾワちゃんと仲良くなる方法を、やさしくユーモアたっぷりに教えてくれます。きらきら光るシルバーを使ったイラストは、クールでかっこいい印象ですが、読んだ後には、子どもはもちろん大人もほっとするようなあたたかい余韻が残ります。また、絵本についてくるハガキに自分で考えたかいじゅうの絵を描いて送ると、新井さんが絵本に出てくるような絵に仕上げてくれるうれしい企画も。父子で楽しく、それぞれのゾワゾワちゃんについて語り合う、よいきっかけになりそうです。
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選書:フリーアナウンサー/絵本専門士 近藤麻智子
大人向けの絵本セラピー®のワークショップ「絵本のち晴れ」や、
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ブックハウスカフェ
神保町のブックハウスカフェ店内には「お父さんの絵本ガレージ」コーナーがあり、 oton+toで紹介した絵本が並んでいます。
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