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ゲームをやめろとは一回も言いませんでした。「よし、ゲームより面白い体験をさせてやろう!」と。【第2回】
エンターテイナー 山口智充さん
家族構成:妻、息子(19歳)、息子(12歳)、娘(10歳)
【オトンの流儀とか】3人のお子さんのぐっさん、いや、オトンです。上の息子さんはもう19歳。家を出て大学の寮で暮らしているとのこと。家を巣立つ息子を見送った時の父としての気持ち、ゲームより面白いオトンでいようと思っていたという話、エンターテイナー魂あふれる家族イベントの話。「ああ、こんな誕生日会をすればよかった」と、つい最近、家にあるベッキーの本を読み直して気づいたことなどいろいろ伺いました。第2回です。
聞き手:oton+to編集長 布施太朗 写真:阿部創太
第2回海に行って深いところに連れて行かれて、でも親父がおるから大丈夫という安心感を覚えています。
―お子さんは、お父さんと同じエンターテインメントの道を行きたいという気持ちは?
興味ないことはないです。やっぱり好きですね。昔は芸能界に入るっていうと「何アホなこと言うてんねん!」っていう感じでしたけど、今はその辺のお母さんたちが「行き行き!芸能界、AKBにはいり、とかジャニースにはいり」とか言いますもんね、親のほうが。芸能界って、僕らが目指していた頃よりも間口が広がったのかなと思います。
―そうかもしれませんね。
だから芸人さんも今、人前では笑いとったことないんですっていう人がいますから。クラスで別に人気もんじゃなかったですとか、ネタなんかやったことないしコンパでも笑わせたことがないんですよという人が芸人になりたいって入ってきて、ネタを作っているんです。結果出せる出せないは別として。入りやすくなっているんだなと思いました。
―なるほど。
昔はそこに来るまでにオーディション受けて、たくさん削り落とされて、残った人の中からまた厳選されて1人とか2人とかいう時代でしたけど。今はとりあえずバーって入れて、誰かしらオモロイのおるやろという感じの地引網方式です。ちょっと違う話かもしれませんが、昔の野球部は、ボール触るより前に、ランニング、うさぎ跳びの時代。今、僕が監督やったらまず野球をやらせます。野球っておもろいやろって。やらせてみて、ボールが遠くまで投げられへん子がいたら、そこから肩鍛えようと言います。先にやらせてから補う方式。これすごく効率がよくて、その人に合った練習が出来ると思うんです。これからはそんな時代になっていくんだろうなと思います。
―まずはやってみる。そこからそれぞれに合わせて補うと。
はい。スピートも早いですから。長いこと積み重ねて積み重ねて、ようやく「よしっ!」ってなった時にはもう時代が俺を欲していなかったということになりかねないですからね。だから英語を話せるようになりたいとなったら、英会話教室より、まず英語圏に行こうという気持ちですから。だから子どもたちにもそれは言ってます。「まずやろう」と。やってみて、何か足りないところがあったときに、それを集中して補う。トレーニングとか考え方だとかを。だから行動力です。そして子どもたちには行動力で僕を羨ましがらせてほしいんです。
―行動力で羨ましがらせる?
はい。例えば僕は、子どもたちから見るとすごくたくさん、いろんなところに行っているんです。「47都道府県、父さん全部行ってんねんな」「行ってるよ」「でも、父さん、ここは知らんやろ」ということを言ってほしい。「ああ、そこ行ってないわー」って言いたい。僕より豊富な経験をしてほしいですね。「父さんも今度行ってみるわ」とか「父さんも今度連れてって」とか。
―子どもから仕入れたい。
はい。去年、長男が下北沢のスペイン料理屋に行って美味しかったよっていうことを聞いた時、嬉しかったんですよ。それで子どもに店の名前教えてもらって、早速夫婦でランチに行きました。
―いいですね。
それで、「スペイン料理が好きだったら、こんな店もあるよ」と僕からも言ったりね。音楽なんかは、今、ほとんど長男から教えてもらっています。これから次男は何を教えてくれるんだろう、娘は何を教えてくれるんだろう、というのが楽しみですね。それはやっぱり経験だと思います。家でじーっとしていても分からない。ネットの情報だけになるし。ネットの情報なら父さんも調べたら分かることだし。だから本当に子どもたちに日々言っていることは「経験」「体験」そしてそのための「好奇心」。あれ面白そう、これ面白そうって。これは親の環境づくりも影響すると思うんですが。
―好奇心は親の環境づくりも関係しますか。
僕自身が諦めていたり、妥協していたり、興味なさそうな姿をずっとしていたら、子どもも同じようになっていくと思いますし。でも僕から「行こう」「行きたい」って小さい時から子どもを連れ回しているので、まあ、子どものためというより自分がやりたいからなんですけどね(笑)。それが子どもにも伝わって、子どもたちの行動力がどんどん付いていけばいいなと思います。
―一番見せたい親父の姿というのは楽しんでいる姿なんですかね?
そうですね。ずーっと人生を楽しむことが 山口智充として、親父としての使命でもあるし、僕の親孝行でもあります。
―なるほど。
子どもが社会に出て、例えばバイトの店長とか、就職したところの上司とか近くの大人にたくさん出会うと思うんですが、一番手本となるのは親だと思うんです。僕自身、大阪から出てきて、今になって見える親の姿もありますから。親父って意外とこうだったんだという発見がありました。だから子どもが親元を離れて、他の大人を見ることで発見する僕の姿もあると思っています。子どもが巣立ったから終了ではなく、ずっと背中を見られているんだと思います。だから自分の人生をどれだけ楽しむかということを意識し続けたいと思いますね。
―どういうお父様でしたか?
うちの親父は、よく遊びに連れて行ってくれた親父ですね。その時の楽しかった記憶があります。淀川公園って僕らは言っていたんですけど、河川敷の大きな公園があって、飼っていた犬をバーっと走らせたり、プラスチックバットとボールで遊んだり。小学校の低学年くらいの時の記憶がすごい残っています。それを学んだかもしれません。
親父は、三勤制というか朝、昼、夜のシフトで働いていて、夜勤とかもあったんです。だから昼間に寝ている姿も見ているんですが、僕らの時間に合わせて遊んでくれるわけです。今思うと、すごいタフだったんだろうなと思います。そのタフさも学びました。近所の人たちに対しても、あんまり前にしゃしゃり出る親父じゃないんですが、必ずニコッと笑って挨拶をする親父でした。そういうのが大きかったですね。車をマニュアルで運転するのも見ていましたし、海に行って深いところに連れて行かれて、でも親父がいるから大丈夫という安心感を抱いたことも覚えています。スーパーマン的なイメージがありました。会社の野球ではピッチャーをやっていて、空手もやってて、ボーリングで獲ったトロフィーもいっぱいあって。ゴルフも始めて、僕が中学の時、賞品でテレビを持って帰ってきたり、常にすごいなと思っていました。親父というのはそういうもんだと。
―親父とはスーパーマンだと。
はい。僕が社会に出た時に、あらためてその凄さが見えてくるんです。親父は7人兄弟の長男で、苦労して育って高校も出ていないんですが、僕の中ではなんでも知っている親父というイメージでした。何聞いても答えてくれるし。字も達筆で、ほんと、何してもスゲーと。その影響はやっぱり大きいです。
でも、あれをしろこれをしろと言われたことはなくて、勉強しろとも言われたことがない。遊びかたも、こうしろああしろと言われたことなくて、基本ものすごく自由でした。全てではないと思うんですが、大事なことは受け継いでいると思います。自分が特に意識をしなくてもそれは出ていると思います。
「最終回:僕はまだ砂場を卒業してないですからね」に続きます。
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今回の"オトン"なアーティストは、
山口智充さん
エンターティナー家族構成:妻、息子(19歳)、息子(12歳)、娘(10歳)
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布施太朗・著¥1,300(税抜)
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