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ゲームをやめろとは一回も言いませんでした。「よし、ゲームより面白い体験をさせてやろう!」と。【最終回】
エンターテイナー 山口智充さん
家族構成:妻、息子(19歳)、息子(12歳)、娘(10歳)
【オトンの流儀とか】3人のお子さんのぐっさん、いや、オトンです。上の息子さんはもう19歳。家を出て大学の寮で暮らしているとのこと。家を巣立つ息子を見送った時の父としての気持ち、ゲームより面白いオトンでいようと思っていたという話、エンターテイナー魂あふれる家族イベントの話。「ああ、こんな誕生日会をすればよかった」と、つい最近、家にあるベッキーの本を読み直して気づいたことなどいろいろ伺いました。最終回です。
聞き手:oton+to編集長 布施太朗 写真:阿部創太
第3回僕はまだ砂場を卒業してないですからね。
―ご実家を出られたのは何歳の時ですか?
25歳です。
―その時、お父様から掛けられた言葉とかあります?
言葉を掛けられたというのはなかったですねえ。でも手紙をもらいました。とにかく一生懸命頑張れと。実家から食べ物とか送られてきた時に、ダンボールを開けたら、一番上に手紙がありました。
―手紙も受け継いだんですね。
親父から学んだことを今、自分が子どもにしてあげてる。ということは「親父はこういう子育てする人に育ててくれたんだ」と。深いなあと思います。そしてこれは僕の子どもたちにも続いていくことなんですね。
―これまでで「あれをしておけばよかった」って思うことはありますか?
誕生日プレゼントって、その子だけにあげるじゃないですか。兄弟が何人かいる仲で、もらえるのは一人だけなんですよね。この子が誕生日だからケーキが食べられる。その子だけにスポットが当たるんです。その他の子は「いいなあ、プレゼントもらえて」ってなるじゃないですか。「いや、自分も今度誕生日くる」って分かってても、今日は「いいなあ」という気持ちになっている。
―そうなりますね。
そこを「今日は◯◯の誕生日だけど、それを祝うという意味で、みんなのプレゼントも用意してるよ」というふうにしてあげると、皆が祝える。「やったー、ありがとう!おめでとう!!」と、みんなが「やったー」の会になったのもしれないなと。それをつい先週気づいたんです。
―なんでまた先週?
うちの本棚をボーっと眺めてたんです。そこに本があったんです。ベッキーの本が。
―ベッキーの本が。
ベッキー、元気にしてるのかなぁって本をめくった時に書いてたんです、ベッキーの家はそうやってたと。これはすごいなと思ったんです。やっときゃよかったって。そんなこと思いもしなかったので。
―なるほど!
イベントについて思うことは多いですね。エンターテインメントの世界でやっている人間として、イベントについては、子どもたちが大人になった時「うちのイベントはすごかった、節分なんか本気の鬼が来てた」とか思わせないといけないなと。だからクリスマスでも鈴をシャンシャン鳴らしながら去っていったりという細かい演出はちょこちょこしているんですけど。
―誕生日はどんなふうにされていたんですか?
プレゼントをハイッって渡すんじゃなくて、宝探しにしてました。暗号を書いたり、クイズ形式にしたりして、家中を探してやっと見つけるというのを子どもが幼稚園のときから小学校低学年くらいまでやっていましたね。ここが父ちゃんの腕の見せどころだと思っていたんで。あと、間違い探しもよくやりました。
―なんの間違い探しを?
家をグチャグチャに散らかすんです。その風景を三脚立てて写真を撮って、何箇所が部屋の中を変えて同じアングルで撮るんです。それをテレビに繋いで交互に見せて「◯箇所違うところがあります。全部分かったらプレゼントあげます」とか。
―おもしろい!
それはもう、やっている自分が面白いんです。一方の写真には明らかに僕がいたりとか。そういう分かりやすいものから、本当に分からないものまで。それを一人で準備するんです。もう散々やりましたね。そういう自分が出来ることを最大限にやるのが僕も好きだし、僕が持っている何かで子どもたちを喜ばせることができれば一番ですもんね。公園の滑り台も面白いし、ブランコも面白いけど、父ちゃんのカラダが一番面白いというのが最高ですね。僕、遊びボックスというのを作ってたんです。
―遊びボックス?
これ「さんまのまんま」でも紹介してもらったんですが、箱の中に30種類以上の遊びが書いてるんです。箱の中から引いて、例えば「ジェットコースター」とか書いてるんです。そしたら子どもにジェットコースターをやってあげるんです。これはね、子どもの友達が遊びに来た時とかは、並ぶんです。次、何が出るか分からないというのも面白くて。しょうもないのもあるんですが、それを考えているのが面白い。それで、実際やってみて子どもが喜んでくれるというね。自分が普段仕事でやっていることと同じなんです。ネタを箱の中に放り込んで、引いてもらって、ウケる。アカンものはすぐになくなっていく。それも仕事と同じです。
―確かに。
大掛かりな「ピザ」というネタもありました。これを引いたら、その子を寝転ばして、カラダの上に具材をバーっと乗せるふりをして、テーブルの下にワーッと滑り込ませるんです。「窯」ですね。それでまた出して切るんです。こういう遊び、全くお金が掛からないじゃないですか。とにかく考えれば出来ることなんです。
―ゲームとかは?
ゲームもダメと言わずに与えていました。ひもじい思いはさせたくないなあと思って。でも僕といる時はゲームはやらなかったですね。
―ゲームより面白い存在になっていた?
それが僕の課題だったんです。子どもって今一番面白いものをやりますから、僕がそうでしたから、一番面白いものにしか食いつかなかった。ゲームをずっとやっているということは、ゲームより面白いものがないからやっているんですね。それは僕、悲しかったんです。でもゲームをやめろとは一回も言いませんでした。よし、ゲームよりもっと面白い体験をさせてやろう!と。ゲームも面白いんだろうけど、もっと面白いものもあるんだよ!って言ってあげられるのが親だと思います。
僕、想像力とか作る可能性を常に持っておきたいんです。これはエンターテインメントの仕事をしている人間として、父親として、夫として、社会人として、全部に必要なことなんじゃないかと思います。今まで接していることって、まだほんのこれっぽっちだなと。もっとすごい何かが生まれる気がするんです。
―まだまだこれからだと。
例えば、僕はまだ砂場を卒業してないですからね。今、砂場遊びしたら、49歳の僕が本格的な山を作れるわけです。水とかシュッシュッてやりながら、幼稚園の時には作れなかった山を。滑り台もブランコも、今やったらもっといろんな乗り方ができる。だから全部卒業してない。一つずつやれることが増えてるだけなんです。そう思うと、自転車も、バイクを乗るようになったから卒業じゃないです。今、チャリンコ見ると「うわっ、今こんなのがあるの?」って乗りたくなるわけです。終わってない。経験した分全部広がって、経験するだけまた広がる。だから若い子とか子どもたちが「もう僕やることない」とか言っても、それは絶対ない。むしろありすぎる。
―やりたいことはありすぎる。
ということを子どもに、子どもは自分で経験しないといけないんですが、そういう感じを僕は子どもに伝えようとしているのかもしれません。
―砂場をまだ卒業してないというのは、いい言葉ですね。
僕、今も本気でビー玉出来ますから。1回好奇心を持ってやったことは、興味があったからやっているんで、終わらないんです。今、ちょっと横に置いているだけです。
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今回の"オトン"なアーティストは、
山口智充さん
エンターテイナー家族構成:妻、息子(19歳)、息子(12歳)、娘(10歳)
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