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もしも、お父さんと息子が同い年だったら友達になるだろうか?どうだろうか?無理だろうか?【第3回】
作家 重松清さん(55歳)
家族構成:妻、娘(26歳)、娘(21歳)
聞き手:oton+to編集長 布施太朗 写真:島野大輝
第3回「パパは細かくてちっちゃい奴だから、君に直接話しをしても素直に聞いてくれないと思う。だから、この本を読んでほしい」という気持ちで、あの本だけは娘のために書いたんです。
―お父さん成分サプリを摂らないお父さん、多い気がします。
自分が下の子を成人させたからしみじみ思いますけど、子どもが育つということは長い長い長編小説ですよ。そう、山あり谷ありの物語。その中を自分も生きているんだということを感じてほしい。今、自分はお父さん物語の何章にいるのか。まだ序章だなとか、そろそろ終盤に差し掛かっているんだろうなとか。それにね、今、おふくろが80歳を超えていて、僕は息子としての最終章を生きているんですよ。長かったなあ、息子の日々。まさか55年も息子をやっていると思わなかったもん。もしかしたらもうすぐ、おじいちゃんとしての物語が始まるかもしれないし、始まらないかもしれない。分かりませんね。でもいい物語になりますよ。大変なことがあってもね。それを懐かしくなる瞬間がある。娘といる時に思うんです。「あっ、これって10年後とかに思い出すんだろうな」って。
―娘さんとのことを書かれたりは?
「きみの友だち」という小説があるんです。これは中学生の男の子と女の子が主人公なんだけど、友達関係というのがテーマ。上の子が中学校に上がる時に、もし友達関係に悩んだら「パパは細かくてちっちゃい奴だから、君に直接話をしても素直に聞いてくれないと思う。だから、この本を読んでほしい」という気持ちで、あの本だけは娘のために書いたんです。
―へえー!
でも読んでいないの(笑)。
―えーっ!
読まないって決めてるみたい、あいつら(笑)。
―でも、小説家の方は誰かのために作品を作ることが出来るんですね。
アーティストも、娘のために曲を作ったとかあるじゃないですか。ああいうのいいよね。
―いいですね。
日記をつけるのもありかもしれませんね。2,3行でも。子どもに残すのはいいかも。もちろん写真や動画もいいけれど、文章って、そこに人が出てくるから。お父さんなりの。写真以上にお父さんの声が感じられると思うんです。だから短くてもいいから、文章を残すのはいいんじゃないかという気がするなあ。
―それがみんなできたら、世の中のお父さん、「総重松清状態」になりますね。
あははは。全ての家庭にマイ重松をみたいな(笑)。今は日記帳を広げなくても、スマホで写真にコメントでもいいし。そうやって手軽に出来るようになったのは大きいですね。
―お子さんにたったひとつのことしか伝えることが出来ないとしたら?
…世の中は生きるに値する。まあ、生きろってことです。これはね、全てのお父さんが、子どもが生まれた瞬間に、最初に思うことなんじゃないのかな。生まれてくれてありがとう。生きててくれてありがとうって。そこからどんどん欲張りになっていくんだけど、お父さんたちは(笑)。実際には、病気になったりとかもあると思いますけど、少なくとも、世の中は生きるに値すると思っていてよ。そんな感じです。
―重松さんの小説からも感じることだと思いました。
やっぱり自分の小説は自分からしか出てこないんでしょうね。自分の分身。自分が先生だったら、自分に息子がいたら。そういう、もしもの世界を僕はずっとやっているのかもしれません。
―その、もしもの世界に、たくさんの人がグッときていますよね。
それは、多くの人の中に「もしも」が足りないということでもあると思います。「もしも」ってゼロから作ると大変だけど、横に移し替えるだけでもいいんです。一番簡単なのは「もしも、娘が息子だったらどうなる?」とか。それから「もしも、お父さんと息子と同い年だったら友達になるだろうか?どうだろうか?無理だろうか?」ということ。
―なるほど。
「自分が親になった時、俺の親父が自分と同い年になったら、俺たちは友達になれるのだろうか?」という「もしも」から始まったんです。「流星ワゴン」という小説は。
―おーっ、なるほど!
僕が若いお父さんに言えることは、そんなことでしょうかね。
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今回の"オトン"なアーティストは、
重松清さん
家族構成:妻、娘(26歳)、娘(21歳)
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