oton+to(オトント) > 特集 > 【夏休み】リオオリンピック特集 > 【岩崎恭子さんインタビュー:第2回】今だから笑って話せる、金メダルの前と後。 後編
【夏休み】リオオリンピック特集
2016.8.9
【岩崎恭子さんインタビュー:第2回】今だから笑って話せる、金メダルの前と後。 後編
14歳と6日。バルセロナ五輪の女子200m平泳ぎで史上最年少金メダルに輝いた、岩崎恭子さん。「今まで生きてきた中で、一番幸せです」というコメントは、オトン世代の方ならよく覚えている人も多いのではないでしょうか。1日にして、誰もが知っている有名人になった恭子さん。でも、オトンとして気になるのは、中学生という時期。多感なタイミングでの、大きな変化。実際のところどうだったのか。話を聞いてみました。今回はその後編です。
oton:そういうことも含めて、もう注目されるのが嫌だった?
岩崎:そうですね・・・。バルセロナ五輪の翌年は、2番の記録で日本代表に選ばれました。1番ではなく、でも代表には選んでいただけたことでホッとしている部分もありました。けど、世界選手権とアジア大会に出れなかったんです。正直、ショックでした。そんなとき、仲のいいスポーツ雑誌の記者から言われたんです。「恭子ちゃんは、オリンピックが終わってから、にじみ出てくるものがなくなった」と。
なんでこんなショックのときに言うんだろう?と、そのときはもっと落ち込みましたが、きっと何かを伝えようとしてくれたんだと思います。たしかにそうかもしれない、と思うようになりました。何かあると、いつもオリンピックのせいにしていたんです。オリンピックのせいで生きにくくなった、と。でも、その言葉を聞いてから、そうじゃないな、と考えはじめるようになりました。そのひとことが、きっかけになったんです。
その後、代表選手として遠征に行ったとき、思い出しました。バルセロナの前までは、遠征先のプールでみんなと過ごすのがとても楽しかったこと。先輩たちにまぎれて、「ませガキ」と言われながらも、「こうすれば早くなるのか」と、他の選手を見て学んでいたこと。純粋に泳ぎがうまくなることが嬉しかったこと。
「わたし、何やってるんだろう」
オリンピックや金メダルが、いつの間にか私を縛り付けるものになっていて。そうじゃないんだ、と思えた瞬間、解き放たれたんです。もう、噂をしたい人は、勝手にしてください、と。
※高校1年生:サンタクララに遠征したときの様子
oton:視界がカラフルになっていくような・・・
岩崎:はい。それからはすごく気持ちが楽になりました。スイッチが入った気がして、ふだんの生活の中で楽しいと思えることが増えてきました。と、同時に思いました。このままダラダラしていたら、私はダメになる。もういちどオリンピックを目指さなければ、オリンピックも金メダルも、自分の中で消化できないものになる。水泳が嫌いになってしまう・・・。
取り組み方も変わりました。与えられた練習の意味をちゃんと理解するようになりました。やらされているという感覚から、やることが大事なんだと思うようになりました。それまで、まわりからは「いつも下を向いているね」と言われていたんです。まわりから注目されたくない、見られたくないと思っていたから、自然と下を向いていたのだと思います。下を向いてても、「岩崎恭子だ」とわかっちゃうんですけどね(笑)。
だから、アトランタ五輪の代表に選ばれたときは、本当に嬉しかったです。ある種ラッキーだったバルセロナとは、意味合いが違いました。結果としては負けちゃったんですけど、泳ぎ終わった瞬間、「よく頑張れたな」と素直に思えました。でも、競技で負けているわけだから、当時はそんなことを周りに言うことはできないんですけど。
oton:有森選手(マラソン)がアトランタ五輪で言われた「自分で自分を褒めてあげたい」というような感じ?
岩崎:そうそう!まさにそうです。競泳はオリンピックの前半なので、競技が終わったらすぐ帰国するので、家のテレビで有森さんのインタビューを見ていたんです。そしたら有森さんが「自分で自分を褒めてあげたい」って!「わたしも同じ気持ち!」と思っていました。有森選手は、メダルを獲られての言葉だったんですけど(笑)。
oton:大変な経験でしたね。あらためて考えて、ですが、つぶれずにいられた強さって、どこにあったんでしょう?
結局、だれか信頼できる大人がいればいいのかもしれない。わたしの場合は親でした。親に対して良く見せようなんて思ったことはないですし、不安も何もなかった。人としてとか、約束を守ることとか、そういうことは厳しい母でしたが、なんでも好きにやらせてくれましたし、人格を否定されるようなことは一度も言われたことがありません。自己肯定感というか、自分は自分でいいんだよ、という強さが、根っこに育っていたのかもしれませんね。
oton:それはまさに「自分で自分を褒める力」なのかもしれませんね。
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