家族が幸せになる、お父さんスタイル

oton+to(オトント)

オトント

子どもとがっつり遊べる時期はそう何年もない

oton+to(オトント) > 父の失敗・悩み・たわごと > 錦鯉

父の失敗・悩み・たわごと

2022.12.11

錦鯉

少しキリッとした寒い朝。
ついこないだのことです。

「ずっと見てました。遠くから」
てなことを言われてしまいました。

これまで、このようなことを言われたことがあったでしょうか。
大学、高校、中学と記憶を遡ってみましたが、
いずれの時代においても、ありません。

「なんだかすごく自然な感じがして」
と、その彼は言いました。

「コツをツレに教えてもらってもいいですか?」
「ん?」

彼の視線の先に目をやると、
生まれたての小鹿のようにグラグラと立つ女性。

「自分だとうまく教えられなくて」
私の足元で腹ばいになっている彼が言いました。

しかし彼女は、少しずつですが、確実に私と腹ばいの彼の
いるところに近づいてきています。

腹ばいだった彼は、いつの間にか馬にでも
またがるような座り方になり、
彼女を手招きしていました。

彼女はカラダをグラグラさせながらも、
ずいぶんと私たちの近くにやってきました。

「こーんにーちわっっっ!!」

彼女が私に挨拶をするや否や、
その人は、私たちの視界から消えてしまいました。

「ツレが始めたばかりなんです」
と、馬に、いや、サーフボードにまたがる彼。

「僕、サーフィンはするんですが、SUPをやってなくて。
で、遠くから見ていて、直接コツを聞きに行こうと
声かけさせてもらいました」

「あ、なるほど」

しかし、そもそもはじめての日が
今日というのがよくなかった。
波の数が多く、もし小さなボートなんかに
乗っていたら酔ってもおかしくないような海の状況。

ボードにまたがる彼に見守られ、
冷たい海風にさらされながら、
頭のてっぺんからすっかりずぶ濡れの彼女は、
それでも、その真新しいSUPの上へと這い上がり、
この世に生をうけたばかりのような小鹿となって、
再び自らの足で立ち上がると、
目の前の私に向かって大きな声で、

「こーんにーちわっー!、、、わっっ!!」

再び彼女は、私たちの視界から消えてしまいました。

冬空の下、彼女は頭の先まで海の中。
見上げると、雲が錦鯉に見えました。

oton+to2

「いいね」いただくと、oton+toの更新情報がFacebookのタイムラインに表示されるようになります
oton+to Facebookページ

oton+to編集長 布施太朗が本を出しました!
書籍のご紹介

祝!第4刷決定!

父親が子どもとがっつり遊べる時期はそう何年もない。

布施太朗・著¥1,300(税抜)

いいねいただくと、oton+to更新情報が
Facebookのタイムラインに表示されます