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お父さんが一生懸命に家事をすれば、娘は将来、絶対に家事をする男と結婚します。これが僕の持論です。
IT企業経営 東京都港区 別所宏恭さん(51歳)
家族構成:妻、娘(9ヶ月)
聞き手:oton+to編集長 布施太朗
―別所さんが育ったご家庭も、お母様は働いていたんですか?
いえ、専業主婦です。父方の祖母も一緒に暮らしていたんですけど、嫁いびり、つまり僕の母いびりがひどかったんです。父はそのことを祖母に言えなくて。それに母は専業主婦ではなくて外に出て働きたいって思っていたんだけど、父が外で働かせたがらないっていう、そんな感じでしたね。僕は次男なんですが母の愚痴を聞く係でした。「本当は外で働きたいんだ」とか、「離婚したい」とかも言っていて、そう言うのはわかるなあ、外で働けばいいのに、離婚すればいいのにって子どもの頃に思っていました。僕、昔から母の家事の手伝いをやってたんですよ。買い物も一緒に行って荷物を持ったりとか。兄と妹がいるんですけど、2人はあまりお手伝いをしてなかったな。いわゆる家父長制が重んじられる家族で、兄は長男として家を継ぐとか、そういう考えかたの家で、兄の部屋にだけクーラーがついていたりしてね(笑)。それで思ったんです。親と同居するのは、今の時代はもうありえないなって。僕が結婚をしたら、自分の親とも奥さんの親とも同居はしないぞって。
―親とは同居しないと。
はい。僕、なぜ今の家族制度が出来たかってことをけっこう勉強したんです。高度成長期のもっともっと前ですね、家父長制を政府が推奨したんです。上野千鶴子さんがさんざんジェンダー論で語っていたことですけど、研究していったら、家父長制が原因で専業主婦っていうのがあるんですね。
―子どもの頃のそういう経験というか想いがあって、奥さんは専業主婦じゃないほうがいいって思ったということですか?
どうだろう。でも基本的に今の家事労働って、1日中家にいてやらなきゃいけないくらいの量はないです。家政婦さんに週2回きてもらったら十分です。それと、奥さんは働いていたらいつでも離婚できるわけじゃないですか。専業主婦でいてほしい旦那って、対等の関係が怖いんじゃないかと。本人は無意識でも、俺と別れたら食べていけないぞっていう風にするために家に閉じ込めて、社会とのブランクをいっぱい作って社会に戻れないようにしてしまっている人いるんじゃないかな。これはもう奴隷制度だと、研究した結果、このような結論に至りました。
―ちなみにお子さんは今、何歳ですか?
上の子は25歳です。最初の結婚の時の息子です。5歳くらいのときに別居したんですけど。そして今、9ヶ月の娘がいます。
―上のお子さんとの交流は今でもありますか?
普通にありますよ。ただ、別に暮らすようになったから思うんですけど、環境はやっぱり重要ですね。だって安倍晋三さんが総理大臣になるっていうのは、本人からすると何も違和感を持たないと思うんです。生まれた時からおじいちゃんも親戚も総理大臣っていう環境ですから。
それでいうと息子は、ぼくと一緒に暮らしてたらまた違うんだろうなと思ったり、何がいいとかということではないんですけど、環境は大きいなって思うんです。
―環境というと具体的にはどういうことを指しています?
一番は人です。周りの人、接する人、見る人。学校を選ぶということも、その学校の教育方針というのもありますが、どういう同級生がいるか、同級生の親ってどんな人か、そういうことだと思います。それと、教育方針というところでいうと、子どもにとって一番重要なのは親。親を見て、これが正しい、当たり前だって思うようになるので。
当たり前というと、ウチ、テレビがないんです。電灯もないんです。まあちょっとはありますけど。夜が暗いのは当たり前なんです。みなさんによくビックリされるんですが。夕ご飯はいつもバルコニーで食べるんです。すると子どもはそれが当たり前になりますから。
―奥様も同じスタイルということですね。
はい。最初の結婚の時から僕はこのスタイルなんです。だからその時も結婚前にいろいろと話し合ったんです。僕はマスメディアが嫌いだからテレビは持たない主義だとか。でも子どもができた瞬間にテレビを買って、そのままテレビ生活に突入していきました。だからやっぱり、いくら話をして相手を説得しても無駄だと。お互いの価値観があっているかどうか、理解し合えるかとうことを見極めること、それが相手を選ぶということです。
―25歳の息子さんとはどういうお付き合いをされていますか。
先日も娘のお宮参りとかお食い初めとかに来てもらいました。彼にとっては妹なんで喜んでくれて。彼とは小さいときから月に1回のペースで会っていたんです。たまに僕のデートと重なって、彼女と息子と3人で動物園に行ったりとかしていました。息子は家に帰ってから「また違うお姉ちゃんだったよ」って母親に言ったりして(笑)。でも中学生になって思春期に入ると、部活が忙しかったりでそう会ってくれなくなりました。でも、たまに電話をしてきて、「今度参観日だから来る?」って言われて「えっ、俺行ってもいいの?ほんとにいいの?スーツとか着た方がいいの?」なんて言うと「普通の格好でいいんじゃない」って言われたり(笑)。そういえば彼が小学校のとき、僕が授業参観に行ったら学校がザワザワしてました。
―学校がザワザワ?
その頃は格好が尖っていたんです。ヘビ柄のジャケットにテンガローハットを被ってウエスタンブーツ。原宿とか渋谷とかじゃ別に目立たない格好なんですけどね。
―小学校ですからね。
はい、神奈川の田舎の小学校でした(笑)。
―なかなかファンキーなお父さんに映ったようですね。
僕は息子に「お父さんのことを友達に言うときは、勝新(勝新太郎)になるって出て行ったんだと言っておいて」と言いました。
―息子さん、理解していましたか?
理解していませんでした(笑)。中学生の時に本をあげたんですよ。ユダヤの教えのことが書いた本を。いい本だなって思って「これをお父さんだと思いなさい」って言って渡したんです。そうしたら息子は母親に「これが父親だって言われても、本だしな」って(笑)。
―楽しいコミュニケーションですね。私は好きです(笑)。
僕は彼にネタを提供しているつもりなんです。とりあえず父親の話しをすればツカミはOKになるように。
俺を話のネタに使えってことですね。息子さんとは対等な関係で付き合っている感じですね。
はい。思春期の頃からはもう対等でしたね。僕は中学生の時に家出をしようとして父親に止められたんです。「オマエ、タダで高校に行かせてやるっていうのに、そんなことしてくれる他人はいないぞ」って言われて、「確かにそうだよね」と。だから高校卒業までは世話になるって言いまして、18歳になってから家を出たんです。自分の息子にも18歳までは面倒をみてやるけど、その後は自分で頑張ってねと言いました。ただし、僕がスタンフォード大学にコネを作りたいから、君がスタンフォード大学に行ってくれるんであれば学費は全部出すよと。
―つまりバーターですね。
はい。で、彼が高校生の時に「だったら英会話を習わないと」って言うもんですから教室に通わせたんですけど、その後、「アメリカは怖いから行きたくない」って言い出して「バカヤロー、だったらお金は出さない!」となりました。彼はその後、僕のやりたいことをやるって言って、王将でバイトをしていました。「何をやりたいの?」と訊いたら、「小説家になる」と。ライトノベルの専門学校ができるからそこに行くということで、毎日王将でバイトをしてお金を貯めて入学しました。でも、卒業しても未だに賞は獲れていなくて。作家デビューできないまま、今25歳です。先日会った時、「小説のほうはどうなの?」って訊いたら「今年のはすごいよ、これは獲れる」って。
―そこはお父さんとしては素直に応援ですね。
あんまり人のこと言えないし(笑)。
―別所さんが高校生の頃にお父さんに言われたことを、今度は息子さんに言ったということですね、この話。
ああ、でも、親父は反面教師として学んだほうが大きいですけどね。
今回の"オトン"なビジネスマンは、
別所宏恭さん
レッドフォックス株式会社 代表取締役
兵庫県西宮市出身。
家族構成:妻、娘(9ヶ月)
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