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お父さんの絵本ガレージ
2022.8.18
お父さんの絵本ガレージ 非認知能力を育む絵本 「楽観力」編
2020年春から連載している、非認知能力を育む絵本シリーズ。現在、非認知能力には世界の注目が集まり、日本の新たな学習指導要領にも、幼児・学校教育を通じて育むべき力のひとつとして、非認知能力(学びに向かう力・人間性など)が提唱されています。IQなどで表現される「認知能力」と、やる気や根気強さなど学びに向かう姿勢の土台となる「非認知能力」。これらをバランスよく身につけることが、教育界における大きな関心事となっているのです。
この非認知能力には様々なものがありますが、今回のテーマは「楽観力」。昨今、私たちをとりまく世界はますます不安定で不確実なものとなり、先の見通しなど全くきかない状況であることは、誰もが実感しているのではないでしょうか。大人でさえ不安やストレスを抱えやすい現状では、子どもへの影響が心配になる親御さんも多いと思います。自分を信じて励ます力や、心を切り替える力、逆境にあっても前向きに考えることのできる「楽観力」を身につけておくことは、きっと一生を支える財産になってくれるはず。
非認知能力について言葉だけで説明するのは難しいですが、幼い子にわかりやすくやさしく伝えられ、親自身も子どもの気持ちに寄り添いながら理解するのに役立つツールとして、絵本を開いてみませんか?何より絵本は、親子いっしょに楽しみながらくり返し読めるところが、大きな魅力ですね。そもそも子どものために創作された絵本は、ポジティブで楽観に満ちた作品がたくさんあります。ロングセラーから新刊まで、厳選して5冊をご紹介します。
① 『大ピンチずかん』
作:鈴木 のりたけ
出版社:小学館 発行日:2022年
対象年齢:4歳くらい~
この図鑑があれば大丈夫!
子どもが出合うピンチを徹底解明
この図鑑は、子どもが日常の中で出合う様々な大ピンチを「レベルの大きさ」と「5段階のなりやすさ」で分類し、レベルの小さいものから順番に紹介しています。例えば「ぎゅうにゅうがこぼれた 大ピンチレベル29 なりやすさ4」とこんな具合に。対処法や似ている大ピンチなども描かれ、大ピンチを徹底解明しています。
表紙の佇まいからして愛嬌たっぷり!子どもと過ごす毎日は、親にとっても大なり小なりピンチだらけ。でも、ふと楽観してみれば、笑い飛ばせることも多いはず。ユーモアあふれる視点と痛快な絵は、お父さんとして3人の子育てに奮闘してきた鈴木のりたけさんだからこそ。ちなみに、いつもお父さんから髪を切ってもらっているわが家の長男は「おもったより みじかくなった」のページで、毎回爆笑。次男は、牛乳をこぼすと「だいちんぴ!だいちんぴ!」と騒ぐので、もう笑うしかありません。この1冊のおかげで、わが家はドタバタしながら今日も愉快です。
② 『ぼちぼちいこか』
作:マイク・セイラー 絵:ロバート・グロスマン 訳:今江 祥智
出版社:偕成社 発行日:1980年
対象年齢:3歳くらい〜
1980年出版のロングセラー
肩の力が抜けるユーモア絵本
「ぼく、しょうぼうしに なれるやろか」。消防服に身をつつみ、勢いよくはしごを登っていくカバくん。でも、カバくんの体重ではしごが折れてしまい・・・・・・「なれへんかったわ」。船乗りは・・・・・・「どうも こうも あらへん」。パイロットやバレリーナなどにも次々に挑戦!でも、どれもこれもうまくいかないカバくんの姿が、ユーモラスな絵で描かれています。
1980年に出版されたロングセラー絵本。体形も、顔つきも、どことなくのんびりおっとりしているカバくん。そのカバくんがやる気を出して頑張ってみるものの、失敗続き。そこに悲壮感を感じさせないのは、カバくんの可笑しな表情と、関西弁の翻訳が見事にマッチしているから。「とにかくせちがらく、あわただしい世に、じっくりと自分を見つめ、ぼちぼちと自分について考えてみることも、大切ではないでしょうか」と訳者の今江祥智さん。「ぼちぼち いこか」は、物事を楽観するための父子の合言葉にもなりそうです。
③ 『まよなかのおしっこ』
作:さいとう しのぶ
出版社:KADOKAWA 発行日:2022年
対象年齢:4歳くらい〜
おばけなんてこわく・・・ない!?
勇気と自信をくれる絵本
今日から一人で寝ると宣言したぼく。真夜中の2時に、トイレに行きたくなって目が覚めてしまいます。「おばけの でる じかんやん!」。勇気を出して、まずは部屋の戸を開けると・・・・・・「セーフ!おばけなんか おるはずが ない!」。再び勇気を出して、廊下の電気をつけ、階段を下りて・・・・・・ぼくは無事にトイレまで行けたかな!?
こちらも関西弁がユーモラスに効いている1冊、今年の新刊です。きっと誰しも経験のある、真夜中に一人でトイレに行く時のこわさを、心情豊かに描いています。読者はぼくの気持ちに共感しながら、ドキドキハラハラ、ページをめくってホッと安心!予想もつかないラストシーンは、子どもに勇気と自信を持たせてくれるでしょう。今はこわいと感じることも、いつかはへっちゃらになる!こうした楽観力は、絵本で何度も疑似体験することで自然と育まれていきます。各ページに隠れている、可愛いおばけちゃん探しも、ぜひ父子で楽しんでくださいね。
④ 『やまのかいしゃ』
作:スズキ コージ 絵:かたやま けん
出版社:福音館書店 発行日:2018年
対象年齢:5歳くらい~
ハマるお父さん続出!?
シュールで可笑しい脱力系絵本
朝が苦手なほげたさんは、今日も昼過ぎに会社に出かけて行きます。でも、飛び乗った電車は、会社とは反対方向へ。トイレのスリッパを履き、眼鏡やかばんも持っていません。終点の山の駅に到着したほげたさんは、同僚のほいさくんと偶然出会い、一緒に頂上を目指すことに。二人は、空気のおいしい山頂で仕事を始めました。
独特の画風で数々の絵本賞を受賞しているスズキコージさんが文章を描き、ほのぼのと味わい深い絵が人気の片山健さんが描いた、貴重な作品です。27年のときを経て復刊されました。突っ込みどころ満載ではじめは衝撃を受けるのですが、だんだんハマってしまうお父さんが続出!「こんなゆる〜い山の会社で働いてみたい」「シュールで面白かった」。お父さん、日々のお仕事お疲れ様です。子どもの楽観力を育むには、まずは大人がもっと肩の力を抜く必要があるのかも。脱力系絵本を読んで、ひととき深呼吸しませんか?
⑤ 『だいじょうぶ だいじょうぶ』
作:いとう ひろし
出版社:講談社 発行日:1995年(通常版)、2006年(大型版)
対象年齢:5歳くらい〜
不安になったらおまじない
楽観力を育むロングセラー
ぼくがまだ小さかった頃、ぼくとおじいちゃんは、毎日お散歩を楽しんでいました。のんびり歩くだけでも、遠くの海や山を冒険するような楽しさにあふれていました。でも、新しい発見や出会いが増えると、困ったことやこわいことも多くなっていきます。その度に、おじいちゃんはぼくの手を握り、おまじないのようにつぶやくのでした。「だいじょうぶ だいじょうぶ」。
初版は1995年に、サイズの大きな絵本も2006年に出版されているロングセラー。「新型コロナウイルスや戦争のニュースを見て、子どもが不安になっている。一緒に読んで安心できるような絵本はないか?」。そんな声をきく度に紹介してきた1冊です。心におまじないの言葉を持ち、父子でそれを分かち合うことは、しなやかに生きていくための大切な支えになってくれるはず。作者のいとうひろしさんのメッセージが胸に響きます。「散歩に出かけよう。ゆっくり、のんびり、歩いて行けば、ほら、ぼくらの周りは、こんなにも、楽しいことがあふれてる」。
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選書:近藤麻智子 絵本専門士/フリーアナウンサー
第1期絵本専門士、絵本セラピスト®、絵本講師の資格を活かして、メディアでの執筆、講演、イベント出演など、幅広く活動する。大人向けの絵本セラピー®のワークショップ「絵本のち晴れ」や、絵本の読み語りとヨガをコラボレーションした親子向けイベント「絵本ヨガ」を主宰。文章を書いた絵本に『絵本ヨガ 森のくるるん』(絵:齋藤槙/そうえん社)がある。oton+toでは、2018年よりお父さんにおすすめの絵本を紹介する「お父さんの絵本ガレージ」を連載中。札幌テレビ、新潟総合テレビアナウンサーを経て、現在はフリーアナウンサー。2児の母でもある。
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ブックハウスカフェ
神保町のブックハウスカフェ店内には「お父さんの絵本ガレージ」コーナーがあり、 oton+toで紹介した絵本が並んでいます。
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父親が子どもとがっつり遊べる時期はそう何年もない。
布施太朗・著¥1,300(税抜)
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