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一人で完結することなんて本当存在しないんじゃないかと思っています。後編
IT会社 代表取締役CEO 甲斐亮之さん
家族構成:妻、娘(10歳、5歳、2歳)、息子(8歳)
今回はIT会社の代表取締役社長で、4人のお子さんのお父さんである甲斐亮之さんです。妻が入院したことをきっかけに、子育てに対する意識が大きく変わったと話されていました。結婚当初は朝の3時や4時に帰ることも珍しくなかった彼を変えたのは何だったのでしょうか。社長として、父として考えていることを語っていただきました。後編です。
聞き手:oton+to編集長 布施太朗
第2回何もしなくて貰えるお金はないってことを教えたいですね。
―これはやっちまったなあとか、失敗したなあとかは。
1人目、2人目にゆとりを持って接することができなかったのはすごい後悔というか、そのぶん今取り戻さなきゃなあと思っています。おんぶや抱っことかのスキンシップの絶対的な量が少なかったなあというのは思っているんですね。上2人と3番目、4番目のほうが懐き度というかお父さん好き度具合がまた違うんですよね。それってやっぱり絶対的な接触量だなと思って。ゆとり、余裕が全くなかったんですよね、1人目、2人目のときは。
―それがお子さんの前でもモロに表れている感じですか?
振り返るとその時間が少なかったなと思って、今増やしているところです。
―叱ることも多かったですか?
めちゃくちゃ多かったです。なんでできないの? っていう、ホントは絶対言っちゃいけないようなことをガンガン言っていましたね。何回言わせるんだとか。あと何回言えばいいのか教えてくれ、その回数言うからとか。
―それを奥様は聞いているんですか?
聞いていると思いますね。妻も妻で1人目、2人目のときはイメージする自分の母親像と保育士やっていた経験といろんな理想と現実のギャップが大きかったんじゃないかなと。だからこそ上の2人に優しくというか、2人に対して時間使おうねと、今は話しています。
―奥様も同じ思いだったってことですね。その頃は二人ではそういう話はあんまりしなかったんですか?
事務的な会話くらいで、未来のこととか家族のビジョンを話すことはまったくなかったと思います。家族旅行に行き始めたのも、3番目がお腹にいたときぐらいですかね。旅行に行くとみんな喜んでくれるので、年に2、3回は連れて行きたいよねってなって。結構仕事との連動性は感じますね。比例するというか。仕事にもゆとりがないと家庭にも同じような心のキャパシティになってしまうというかですね。
―マネジメントの視点でいうと、子育てと会社の方っていうのは通ずるものがありますか?
そうですね。同じようになっちゃうなとは思います。マイクロマネジメントするのは好きじゃないので、5歩ぐらい離れてずっと見ている感じですね。何かあったらすぐに駆けつけられるようにするっていうことです。
―お子さんとかも会社の方も、凝視されているっていうのは気づいているんですか。
気づいているんじゃないですか。ちゃんと見てくれている感覚はあるんじゃないかなと思います。
―我が家の独自のルールとかいうのはありますか?
挨拶に関しては結構うるさく言っています。あとお小遣いはあげてないんですよ。世の中に黙っていて貰えるお金ってあんまりないと思うので、お金って誰かにありがとうって言われた対価だと思っているので。そういう意味でお小遣いはやめて、よくあるお手伝いで渡しています。今お母さんがしてほしいことをお手伝いしなさいと。観察をして、今これに困っているんだろうなといって先に行動して報告をする。お母さんが5分後、10分後にやらないといけないことだったら、50円。今日はやらなくてもいいものだったら、10円みたいな時価にしているんですよ。
―なるほど。
例えばですけど、お水もどこでどのタイミングで販売されるかで値段が全然違うじゃないですか。富士山の8合目とかだったらお水でも、500円とかしますし。5合目だったら100円ですけど。というふうにシチュエーションによって同じものでも価値が変わるので。観察をしてこの人が何に困っていて、どうしたら喜んでくれるだろうなあと考えて行動するのを、ぜひ身につけてほしいなと思っています。
―ご自身がそういうふうに育てられた?
いえ、僕は普通に固定の小遣いもらっていました。何もしなくても貰えましたね。するとそれが当たり前の権利になっちゃうんですよ。当たり前になると、なんでお小遣いもらえないのみたいな。もらうのが当たり前になるのはすごく危険だなと思って。実際僕がそうなってたんで(笑)。
―上の子は何歳ぐらいのときからそういうのを考え始めたんですか?
やり始めたのは5年前ぐらいじゃないですかね。4歳、5歳ぐらいからですかね。面白いんですよ。上の子がお手伝いをすると、下の子も勝手にやり始めるんですよね。お手伝いを取り合う(笑)。お姉ちゃんの背中を見てというのはあるなあと思ってですね。
―具体的にどういうお手伝いを。
洗濯物ものを干す、畳む、洗い物をする、お風呂場掃除。あとは床の掃き掃除、拭き掃除、トイレの便座掃除を。荷物を運ぶ、冷蔵庫整理するとかです。長女はキレイ好きなんでしょうね。朝6時過ぎに起きて、最初にするのがリビングの掃除なんですよ。びっくりしますよね。でも下の子はガンガン汚すじゃないですか。それに対してギャーギャー怒らずにですね。片付け一緒にしよって言って下の子たちと一緒に片付けています。すごいですよね!
―素敵ですね。
見ていると幸せですよ。泣きそうになります。
―このお手伝いは男の子もするんですね。
息子はすごくお小遣いがほしいので。僕もポンポンおもちゃは買わないので、七夕の短冊とかには「大人になってお金持ちになって、子どもがほしいもの全部買ってあげる」みたいなこと書いていたりするんですよ。
―性格は全然違う感じですね。
はい、みんな違います。長女はお金を使わないからお小遣いがたまりすぎて。人に何かあげるとこにしかお金を使わなく、使うのは、兄弟や友達の誕生日プレゼントだったり旅行先でのお土産くらいですかね。小遣いだけでも2、3万円貯まったらしく、そしたらお小遣いは要らないって今言っているらしいですよ(笑)。なんだその無欲はって(笑)。それはそれで将来のために取っといてあげなさいよって言っているんですけど。
―お子さんに一つのことしか教えることができないとしたら、何を言いますか?
友だちを大事にしろ、ですかね。一人で完結することなんて本当に存在しないんじゃないかぐらいに思っています。仲間とかいろいろ含めての友だちなんですけど、周りの人といい関係を築き続けなさいっていうそれだけで会社できたり、なくなったりするので。
―いい関係を築きあげるためには何が必要ですかね。
観察することだと思うんですね。さっきの手伝い、お小遣いのところですね。この人が今何に困っているんだろとか、何ほしいんだろっていうのを見てちゃんと行動に移るような、先にギブさえしていれば必ずギブ&ギブになってくると思うので。
―どんな父親でありたいですか?
かっこよくありたいんですよ。かっこいい基準ってそれぞれみんな持っていると思います。ちゃんと正面向いてまっすぐやりたいなっていうのは大きいですかね。やっぱり息子に関しては親父を軽く超えて行ってもらわないといけないなあと思いますし、そんな簡単に超えられない親父でもありたいですし。いい意味でのチャレンジする相手みたいな存在、親父みたいになりたい、親父を超えたいと思ってもらえるようになりたいなあと思いますね。
―娘さんたちに対してはまっすぐなお父さん。
そうですね。困ったら相談とか頼りにされる存在でありたいですし、頼るのにためらいがあるような親ではありたくないです。
―最後に「子育ては◯◯である」。◯◯には何が入りますかね。
子育ては「ドラクエでいう、ラーの鏡」ですね(笑)。本当に全部さらけ出す感じが出ていて、自分を全部さらけ出しますし、それにポジもネガも含めていろんな要素を子どもが体現してくれるので、真実を映す鏡だなあっていうのを感じますかね。鏡が今4つあるので(笑)。いろんな面を映してくれるなと思ってですね。
―今お子さんが小さくて、お父さんもお母さんも余裕がない状態の方に何かアドバイスをするといたら。
3年後絶対笑っているから大丈夫だよ、って言いたいですね。育児に限らず仕事でも勉強とかの経験でもスポーツでもそうなんですけど、しんどい経験しか人を成長させないと思っているんですよね。振り返ってみて、どこで自分が成長したかな、変わったかなというとだいたいしんどい経験が出てくると思うんですよ。だからこそ人としても成長のすごいキーポイントになっている時間だと思います。
―あと一つ、お仕事における志を伺えれば。
僕は多数精鋭の組織というかチームを作りたいんですよね。少数精鋭のスピード感、品質というのを多数でできたらそれほどいいものはないと思っていて、それを500人とか1000人規模で実現させたいなあと。同時にベースがすごく寂しがりやなので、世界中に仲間がほしいんですよね。仮にうちが大きな賞を取ったときに、社内の100人だけで喜ぶのじゃなくて同じことに対してパートナー企業とか国内のお客さんとかも含めて喜んでくれて。また海を挟んでいろんな国のパートナー企業のスタッフや仲間たちが一緒に喜んでくれる状態、それはすごく幸せだなあと思ってですね。しんどいときは一緒に分かち合うということですね。
―だからご家族も多いのかもしれませんね
はい(笑)。
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甲斐亮之さん
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