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お父さんの絵本ガレージ
2020.12.16
お父さんの絵本ガレージ 非認知能力を育む絵本 「自己肯定感」編
今年1年を振り返ってみると、色々な想いが去来します。ウィルスの猛威により、私たちの生活は一変しました。育児も多大な影響を受けていますね。ますます予測不能な未来が待っていると実感する日々ですが、こうした時代の過渡期だからこそ、“生きる力”のある子どもに育ってほしい……。そんな風に考えるお父さんも多いのではないでしょうか。IQや学力テストなどでは測れない、人生を豊かにする“生きる力” とも呼ばれる「非認知能力」を育む絵本シリーズ、今回のテーマは「自己肯定感」です。
自己肯定感とは、ありのままの自分自身に対する満足感のこと。2019年に発表された内閣府の調査「子ども若者白書」によると、満13歳から29歳までの男女を対象としたアンケートで、日本の若者は諸外国(アメリカやイギリス、韓国など)の若者と比べて、自分自身に満足していたり自分に長所があると思っていたりするなど、自身を肯定的に捉えている若者の割合が最も低いことが明らかになりました。この結果は様々なメディアで紹介され話題に。自己肯定感は、幼児期から育むことが大切で、日常における親の関わり方も重要だと指摘されています。
自己肯定感を育む絵本といっても、これを読めばすぐに効果が表れる!というものではありません。自分を認め満足するとはどういうことか。まずは親自身が考えたり、気づいたりできる“きっかけ”となるような絵本を選びました。もちろん、親子で楽しめる内容であることを第一に、どの絵本も子どもにやさしくわかりやすく描かれています。
もうすぐクリスマス。今年のプレゼントに絵本を一冊添えるのはいかがでしょうか。絵本を読むことは、親から子どもへの最高の愛情表現のひとつ。こころもからだも触れ合いながら絵本をいっしょに読んで過ごす時間こそが、子どもの自己肯定感をゆっくりと着実に育むことにつながると、わたしは信じています。お気に入りの絵本と出合えますように。
① 『フンころがさず』
作:大塚健太 絵:高畠純 出版社:角川書店
対象年齢:4歳くらい~
ぼくはぼくでいいんだ
好きなことを大事にしよう
まずは今年発売されたばかりの新刊から。主人公は、フンをころがすのが大好きなフンころがし!まわりの生き物たちから「へんなやつ」とバカにされ、フンをころがさないことを決意。自由になった気がしたけれど、なぜか毎日つまらない。そこへ友達のきつつきがやってきて、笑いながら言うのです。「きみは フンをころがすから きみなんじゃないか!」。フンころがしくんの鼻歌が、楽しく深い余韻を残します。フンフンフン フンコロフン♫
テンポのよい物語と絵、生き物たちのユニークな表情に、思わず惹き込まれつつ。自己肯定感と好きなことはつながっているという真理が、明るく潔く伝わってくる絵本。親としては、子どもが好きなことを大事にしてあげたいなと、あらためて。ちなみに昆虫好きの4歳のわが子は、初めて知ったフンころがしという生き物に興味津々。タイトルからしてツボのようで「フンころがさず……」と時々つぶやいてはニヤニヤしています。
② 『オレ、カエルやめるや』
文:デヴ・ペティ 絵:マイク・ボルト 訳:小林賢太郎 出版社:マイクロマガジン社
対象年齢:4歳くらい〜
衝撃のラストシーン!
カエル父子の会話劇を楽しんで
つづいてはなんと、自分という存在自体をやめる!と言い放つ、小さなカエルの物語。「あのさ、おとうさん。オレ、ネコになることにするや」「え?おまえはネコにはなれないよ」「なんで?」「そりゃおまえがカエルだからだよ」。こんな調子で、カエル父子の陽気な会話が繰り広げられます。ネコの他にも、ウサギやブタやフクロウになりたいと言う度に、お父さんがシンプルかつ丁寧に答え続けるのです。全て吹き出しでデザインされた会話劇の、衝撃のラストシーンをお楽しみに。
きっとこんな風にいつも、カエル父子は楽しくおしゃべりしているんだろうな。母親の立場から読んでも、とてもうれしく微笑ましい光景です。子どもの突拍子もない言葉にも、とことん付き合う。こうした日常こそが、子どもの自己肯定感を育むのに大切なのかもしれません。裏表紙では、カエルくんが一言、読者に問いかけます。「キミはなにになる?」。究極の自己否定から広がる会話も面白いですよ。以前oton+toで紹介された記事をぜひご参考に。この絵本にハマった、リアル父子の物語です。(記事下のリンクからどうぞ)
③『しょうぼうじどうしゃ じぷた』
作:渡辺茂男 絵:山本忠敬 福音館書店
対象年齢:3歳くらい〜
小さな消防車が大活躍!
個性の素晴らしさを描いたロングセラー
とある町の消防署に、はしご車ののっぽくん、高圧車のばんぷくん、救急車のいちもくさんがいました。大きな火事があれば大活躍し、子どもたちにも大人気。古いジープを改良した小さな消防車じぷたもいましたが、いつも馬鹿にされ、誰も気にかけてはくれません。じぷたは自信を失いかけていました……。そんなとき、道の狭い山の中で家事が発生!出動を命じられたのは、なんとじぷたでした。
1966年刊行のロングセラー。子どもの頃にたくさん読んだというお父さんもいらっしゃるでしょう。文章を書いた渡辺茂男さんは「じぷたは、ひ弱で体がとても小さく、いつでも他人に後れをとっていた幼い自分の分身でした」と語られています。乗りもの絵本の第一人者である山本忠敬さんのリアリティある絵にのせて伝わってくるのは、時代や世代を超えた大事なメッセージ。それぞれに個性があり、それぞれに活躍できる場が必ずある。わが子の個性を認め、見守るまなざしを、忘れないでいたいですね。
④『ええところ』
作:くすのきしげのり 絵:ふるしょうようこ 出版社:学研
対象年齢:5歳くらい~
ええところを見つけよう
自己肯定感と思いやりを育む物語
小学1年生のあいちゃんがつぶやきます。背は低いし、走るのも遅いし、100点なんて1回もとったことがない……「わたしって、ええところひとつもないなあ」。友達のともちゃんは、あいちゃんのええところをじっくり考えて伝えてくれました。「あいちゃんの手は、クラスでいちばんあったかい!」。ともちゃんが自分のことのように自慢するので、クラスのみんなが集まってきます。でも友達の手を次々に温めていくうちに、あいちゃんの手は冷たくなってしまいました……。
自己肯定感と思いやりの大切さ。あいちゃんが流す、かなしい涙やうれしい涙から、大人もたくさんのことを教わります。揺れ動く子どもの繊細な気持ちを表現したのは、元小学校教諭のくすのきしげのりさん。担任したクラスで、自分や友達のええところを見つけることを実践してきたエピソードを元に、物語を紡いだそうです。絵本を読んだ後におすすめしたいのは、お子さんのええところを見つけて伝えてあげること。きっとすてきな笑顔が見られますよ。
⑤『ぼくだけのこと』
作:森絵都 絵:スギヤマカナヨ 出版社:偕成社
対象年齢:5歳くらい〜
ぼくは世界にただひとり!
直木賞受賞作家による心に残る絵本
主人公のようたくんが「ぼくだけのこと」を数えていきます。「さんにんきょうだいのなかで、ぼくだけ、みぎのほっぺにえくぼがある。これは、ちょっとうれしいぼくだけのこと」。その他にも、5人家族の中で、ぼくだけいつも蚊に刺されるし、仲良し7人組の中で、ぼくだけ逆立ち歩きができる。全校生徒452人の中で、ぼくだけ運動会の閉会式で貧血を起こして倒れた……。世界にはたくさんの人間がいるのに、ぼくは世界にただひとり。これってすごいこと!
直木賞受賞作家でもある人気の児童文学作家、森絵都さんが、日常にあるささやかな「ぼくだけのこと」を、やさしくユーモラスに綴った一冊。ありのままの自分が、いかに尊い存在であるか。スギヤマカナヨさんのシンプルで明るい絵だからこそ、こころに自然に響いてきます。「ぼくだけのこと」「わたしだけのこと」を、親子いっしょに探してみませんか?何気ない毎日と、いまここにいる自分を、愛おしく思える時間を過ごせますように。
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選書:フリーアナウンサー/絵本専門士 近藤麻智子
大人向けの絵本セラピー®のワークショップ「絵本のち晴れ」や、
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ブックハウスカフェ
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