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映画「461個のおべんとう」。原作者のTOKYO No.1 SOUL SET 渡辺俊美さんに、親子の実話を聞きました。
ミュージシャン 東京都内 渡辺 俊美さん(53歳)
家族構成:妻、息子(26歳)、娘(6歳)、息子(3歳)
聞き手:oton+to編集長 布施太朗 写真:池部裕正
―息子さんとの関係性はずっと良好ということですが、それでも渡辺さんの中で「これは今でも後悔してるな」「やっちまったな」ってことってあったりしますか?
そうですね、1歳から5歳くらいまで、もっといっぱい一緒にいてあげられたら良かったなとは思います。その頃は妻も僕も忙しくしていて、ベビーシッターさんに預けて仕事をしていたので。今のコロナ禍で、普段だったらいない週末も家族と一緒にいることが増えて、3歳・6歳の子どもに対しての些細な喜びとかを感じることも多くなったことで、この時は、この時期しかないんだということを強く感じるようになりました。だから息子が小さい時はもうちょっと一緒にいたかったなと思いますね。
―小さい頃の時間は一瞬だからこそ、後になって感じてしまう後悔はありますよね。他には何か思うところがあったりしますか?
僕が塾に通わなかったこともあって、息子も行かせなかったんですよね。僕自身、受験のような競争する、みたいなことが好きじゃないのもあったし。結局、自分が育てられたように育ててしまうというか。でも東京と田舎だと環境が全然違う。だから今思えば、息子には塾のような場所に通う経験をさせてもよかったのかな。
―何か習い事を息子さんはされていなかったんですか?
唯一息子が習いたいっていったのがプロレスだったので、プロレスはやってましたね。でもそこでも後悔があって。僕が小学校1年から大学までやっていた剣道と重ねてしまったんです。結構厳しい時期というか、辛い時期を経験したので、息子にはあまりそういう思いをして欲しくなくて、「辞める」って言われた時に「あ、そうか」って言っちゃったんです。でも、そこで上手く誘導して、ちょっとだけ引っ張ってあげることができたら、何かが広がることもあったかもしれないなって。そしたら今頃プロレスラーになってたかも。もちろん、今も幸せで、会えていて元気なので、総じて良いんですが。
―6歳のお子さんにも26歳の息子さんの時と同じようにお弁当を作ってらっしゃるんですか?
作ってますよ。でも、実は娘のお弁当は妻が作るのもいいなと僕は思ってたところもあったんです。けど、下の子が生まれて大変だったこともあり、妻には少しでも朝休んでもらいたいなと思って、僕が作っています。
―夫としての在り方みたいなところは、はじめと今とでは何か変わっていますか?
はじめと今との変化ですか。でも飯は作ってたので、ずっと。掃除もやっていたし、変わってないのかな。それこそ「イクメン」っていうのが出てきた時は、あんまり好きじゃないワードだなって思っていました。子育てを父親がするのは当たり前だと僕は思っていたので。もちろんその言葉がきっかけで、育児に関わることはあると思いますけど、でもやったからと言って偉くはないな、って。これも自分の親父の姿を見て似た部分ってことかな。母が忙しい人だったので。
―やはりその姿勢は渡辺さんのお父様から続いているんですね。
そうですね。やっぱり親ですよね。親が遊んでたら、その子どもも遊びますよ、と僕は思ってて。だからなるべく子どもの前ではちゃんとしなきゃって。
―渡辺さんがお父様に似てきたのと同じように、息子さんが渡辺さんに似てきたなって感じた時は嬉しいですか?
嬉しいです。それは超うれしいです。小さな子どもたちの表情も、妻から「今の顔パパそっくり」とか言われるとスッゲー嬉しい。「そうかな?」とか言って(笑)。
―いいですね、幸せそうです。今、ざっくりと「いいお父さんになりたいけど、どうしようかな」みたいなことを考えるオトンにアドバイスするとしたらどんなことですかね?
良いお父さんになる必要ないんじゃないですかね。そう考えるから、苦しくなるんじゃないかな。1つ言えることとすると、奥さんと仲良くしていれば全然大丈夫ということです。奥さんと仲良くしているのがいいパパだと思いますね。
―なるほど。では思春期にさしかかった息子さんがいるオトンに対してだとどうでしょうか。というのも、日本の中学生とか高校生の自己肯定感がものすごくひくいって言うのがありまして。
そうなんですね。どうしてなんでしょう。お互いに興味がなくなる瞬間なのかもしれないですよね。親からすると、それまでずっと子どもを見ていて。でもその時期くらいで「ちょっと手が離れたな」とか、「自分の好きなことできるな」とか思うっていう。
―興味が離れてしまうのはしかたないことって思われますか?
うーん、僕が思うのは、子どもが興味をもったものに、興味を持ってあげるっていうことですね。例えば僕なんかは、全然TVとか観ない方でしたけど、息子がお笑いとかをずっと録ってくれていたので一緒に見て笑うようになったり。疲れてるんだけど、「まあいいか」って。
―お子さんが興味を持つものに対して興味をもってみる?
興味を持った方がいいというより、持ってあげるのが普通かなって。それができないのは、もしかしたら自分のことが中心になってしまっているのかもしれないですね。「ゴルフやりてーな」とか「パチンコやりてーな」とか。自分の時間よりも、子どもが興味持つことへの時間を優先してみるのがコミュニケーションが希薄にならないポイントだと思います。
―今日はありがとうございました。
ありがとうございました。
―お話大変共感できました。うちも子どもが3人いますけど、子どものすることにも、子どもたち自身にも興味を持つと自然と子どもたちの方から会話をしてくれたりするんですよね。そういえば、うちは湘南に住んでまして。子どもが通っている学校は、今回のロケ地の近くなんです。
いやあ、あの辺はいいですね。私も住みたいな思って、検討したこともあります。
―今度良い不動産屋さん紹介しましょうか(笑)。
取材後記
この映画は父と息子の約束の話です。約束というのは、相手に対してはもちろん、自分自身がこれをやると決めること。自分の覚悟と言ってもいいかもしれません。そう書くとちょっと肩に力が入ってしまうかもしれませんが、この映画では、その覚悟がなんともしなやかなんです。毎日息子のお弁当を作るという約束を守る毎日、お父さん自身が楽しんでいる。そしていちいちこだわっている。そのスタンスにとても共感しました。高校生の息子とはとてもフラットな関係。お互いの目線が横にあるんですね。これ、観るお父さんによっては、そのユルさに頼りなさを感じる人もいるかもしれませんが、oton+to的には、これでいいんです。と言いたい。フラットと言っても友達親子ということでもない、そこには父と息子を感じさせる何かがありました。主役を演じるV6の井ノ原さんの演技には、そんなしなやかな父性を感じました。それとやっぱりお弁当。お弁当コミュニケーションというのは作る人にとっても食べる人にとっても、掛け替えのない宝物です。この映画を観て、俺も作ってみよう!と一人でも多くのお父さんが思ってくれたら嬉しいですね。それはお父さんの楽しみも一つ増えることになりますから。
今回の"オトン"なアーティストは、
渡辺 俊美さん
TOKYO No.1 SOUL SET ボーカル&ギター
福島県富岡町出身。
家族構成:妻、息子(26歳)、娘(6歳)、息子(3歳)
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