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ミュージカル「ビリー・エリオット」のオトン役、吉田鋼太郎さんに訊きました。【後編】
俳優 吉田鋼太郎さん
7月19日から始まったミュージカル「ビリー・エリオット」。男手一つで息子を育てる炭鉱夫の父とバレエに目覚めてしまった息子の物語。「これがもうoton+to感満載なんです。ミュージカルはちょっと、、、」という食わず嫌いのお父さんたちにも、これはぜひ観てもらいたい。ということで、その見どころをオトン役、吉田鋼太郎さんにお話を伺いました。実際のオトンとしての吉田鋼太郎さんの反省も。
oton+to編集長 布施太朗 写真:吉谷吾郎
第2回過度な期待なんかしたら子どものプレッシャーになることは分かるんですが、期待すまいと思うことは、期待しているということですからね。【後編】
―ということは、ご自身の体験と今回の役は重なっていますね。
そうですね。重なっているっちゃ重なっています。
―息子さんには期待してしまうんですね。
過度な期待なんかしたら子どものプレッシャーになることは分かるんですが、期待すまいと思うことは、期待しているということですからね。期待は必ずしてしまいます。彼が優れた人間であってくれと。
―優れたというのは、例えばどういうことに対して?
全てにおいてです(笑)。
―じゃあ、ものすごいことを息子さんに求めてしまっているんですね。
そういうことです。もちろんそれはありえないことだと思っているんですけど、ありえないことだということが、親としては悲しいわけですよ。
―ご自身が子どもの頃や若い頃、他の奴らと俺は違うぞと思ったりは?
母親がそういう育て方をしていたんで、同じなんだと思いました。「やればできる子だから」と言われていたんです。実際はできないんです。でも「あなたはやればできる子だから頑張りなさい」と。でも、子どもとしてはいい迷惑です。できないんだから実際。そんなにあれもこれもできるなんて言われても、全く手も足も出なかったりするわけで、その時のしんどさはものすごく覚えているくせに、自分の子どもにはそれを求めてしまっている(苦笑)。
―反面教師ではなく、そのまま受け継いだんですね。
そうなんです。俺、母親と同じことやってるわって。なるべくそういう風にすまいという客観的な目線はあるんだけど、ついそうなってしまう自分がいます。絶対にいい親というのは、子どもに過度な期待をしないで物心つく頃から子どもの人格を認めてあげられる親なんだと思います。親というのはあくまでサポート。ご飯食べさせてあげて着るもの着せてあげて住むところを作ってあげて、そういう仕事なんじゃないかと思います。親の望みを子どもに押し付けたりするのは、やはりダメなことだと思います、頭では分かるんですが、なかなかできることではないなと。
―世の若いお父さんに何かアドバイスすることがあるとすればそういうことですか?
そうですね。むしろ逆に聞きたいです。子どもを対等な人格として扱い、素直にまっすぐ育っている家庭があれば。
―息子さんとは男同士の関係ですか?
もう大学生で成人しているので、完全にそうですね。でも子どもなので、やれる限りのことはやってやろうと思います。常識の範囲内でね。そういえば、こないだ車を貸してくれって言うから、貸したんです。免許取り立ての息子に。大丈夫だと言うのでね。こちらとしては、免許取り立てだし、多少擦ったりしてもまあいいかと思って貸したんです。そしたらボコボコになって帰ってきました。擦ったどころの話じゃなく、ボコボコ(笑)。修理代が30万円もして。もう次は貸しません(笑)。
―それはお気の毒でしたね。ご無事で良かったです。話は変わりますが、ミュージカルって、多くのお父さんたちは全く触れることのないまま一生を終えていくと思うんです(笑)。でも、oton+toとしてはお父さんたちに新しいことを体験する機会を増やして欲しいと思っていまして、吉田さんにぜひ、ミュージカルの見どころを、世のお父さんに伝えていただきたく。
はい。お父さん達というのは夢も希望もない人が多いと思うんですけど、まあ、その人達に夢も希望も与えたってどうにもならないと思うので(笑)。今回のミュージカルは、皆さんがイメージしていらっしゃるような絢爛豪華なすごい衣装を着てすごいカツラをかぶってどこかの国の王朝の話とかそんな話ではなく、本当に身近によく転がっている話なんです。それがとてつもなくドラマチックになっているんです。僕はそこが面白いと思いました。それはここに生きているお父さんと息子の対立がやがて和解になりやがて二人の信頼関係になっていく。そしてそれを取り巻く人たち、おばあちゃんやバレエの先生も全員が自分たちの主張を持っていてその主張を必ず相手にぶつけていくんです。それはイギリスというお国柄というか気質もあると思うのですが、みんな必ず相手に対して主張をして納得がいくまでお互いぶつけ合いをします。そのエネルギーがいつのまにか踊りになっていたり歌になっていたりするんです。お客さんは知らないうちにそのエネルギーに引き込まれて行きます。
―普段、起こりがちな話がものすごいエネルギーで展開してくということですか?
はい。日常によくある話なんだけど奇跡のようなミュージカルです。そういうものを僕はほとんど見たことがありません。これは夢も希望もなくしているお父さんもついつい身をのりだして観てしまうと思います。ぜひ、そこは騙されたと思って来てもらいたい。とにかく舞台の上で起こっていることに乗せられて、お客さんがどんどん芝居の世界に入っていける作品なので、「ミュージカルはちょっと」と思っているお父さんにも、この機会にお芝居ってもんは面白いんだと感じていただくために、チケットを買っていただければ笑)。キャバクラ、いや、居酒屋を3回ほど我慢していただくことになりますが、そのくらいの価値はあると思います。
―いや、多分もっと価値があるんじゃないかと思いますが。
あははは!ありがとうございます!
―ありがとうございました。
※※※
私は7/19のプレビュー初日の舞台を観に行ってきました。このインタビューをさせていただいた後だったこともあり、「オトンと息子の物語!!」という心構えで座っていると、はじめにお母さんの想いを唄っているところでグッときてしまいました。子どもの成長を見守ることができるというかけがえのない喜びについて、感じ入るものがありました。吉田鋼太郎さんの、戸惑いながら応援するその姿は、多くの親の姿そのもの。客席には著名人の方も多くいて、カーテンコールでは北大路欣也さんが真っ先にスタンディングオーベーションをされていました。いやあ、まあ、しかし、すごいパワーですね。同じステージにいる大人と子ども全員が思いっきり発するエネルギーというものは。すごくよかった!
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ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー
7月19日から公開中のミュージカル「ビリー・エリオット」。男手一つで息子を育てる炭鉱夫の父とバレエに目覚めてしまった息子の物語。「これがもうoton+to感満載なんです。ミュージカルはちょっと、、、」という食わず嫌いのオトンにも、これはぜひ観てもらいたいです。
今回の"オトン"なアーティストは、
吉田鋼太郎さん
俳優
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