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子どもと会話

2016.7.1

バリカン

いま、ムスコと親父は同じ床屋さんに行っている。いわゆる千円カットのところ。
そこで自分を指して、同じ様に切ってくれという。
当然ながら出来上がりは親子で似たような顔して同じ髪型だ。
床屋さんに行くようになる以前は、
親父がバリカンで刈り上げる、親父床屋だった。

親父の子どもの頃は、母親がハサミでカットしていた。
素人がはさみを使うので、
何とも微妙なマッシュルームカットだったのが写真に残っている。

バリカンを使わずマッシュルームだったのには訳がある。
小学校1年生のときに、学校の廊下で柱に頭をぶつけて、
その傷がいわゆるジャリッパゲになっていたからだ。
それこそ昔のマンガにあるような、はっきりした10ハゲ。

自分が子どもの頃は、そのハゲを見られるのが嫌でいやで、
隠すような髪形にしていた。
中学のときに訳あってボウズ頭にして、それ以来吹っ切れたけれど、
それまでは家で髪を切ってもらうのに、
あっちが長いとかこっちがずれたとか、まあ大層文句を言っていた。

そんなことを、すっかり忘れていた。
小学校に入ってからは、親父床屋にもだんだんと注文をつけるようになってきていた。
髪を切りたい親に、思い通りに切られたくないという主張。
そうか、それもまた自分の通ってきた道なのだなと思う。

そんな本人の気持ちを知りつつも、
むさくるしいと思ってちょっと短く刃を入れた。
ヤバい。ちょっとやりすぎた。
はっきりとした虎刈りになってしまった。
おしゃれでわざと線を入れたみたいに、いろいろ取り繕おうとしたけど、
どうやっても跡は残った。

そりゃプロじゃないんだからやっていれば失敗もあるさ、
気にすんなよと彼に軽く言ったのがまた傷つけたみたいだ。
気にするに決まってるじゃんと涙を浮かべていた。

翌日、学校で友だちに何か言われた?と聞くと、
髪切ったねっていわれたと簡潔に応えた。

別に何も入れなくてよかったじゃんと励ますように言ったら、
そういう問題じゃないとまた涙目。
そうだよな、子どもなんだしこれくらい大差ない、
誰も気にしないだろうというのは大人の勝手思い込み。
小さな変化だって子どもには重大ごとで、
自分も虎刈りの目にあったときに泣いて親を責めたなと思い出す。

ムスコは子どもの頃から内弁慶で、
人の輪に入っていくのにだって後ずさりしていた。
それがただ消極的に見えるて歯がゆく思っていたりもした。
けれど少しずつ成長して、
今では毎日楽しいアホな報告をしてくれる小学生男子になったけど、
髪型を気にして学校に行くのがしんどくなるような気持ちになることだってあるだろう。

それでも気持ちを切り替えて一日を過ごしたのはすごく大きなことだったろう。
そんなことにも成長を感じることができるのに、
軽く何もいわれなくてよかったじゃんなんて声がけは、
彼の葛藤に対して失礼だった。

今の自分は寝癖のまま会社にいっても、
あまり気にしないような鈍感力を身につけてた、
立派な中年となったけれど、
だけど昔はパンツや靴下のゴムがしっくり来ないからといって、
学校に行き渋るほどの面倒くさい子だった。

バリカンの失敗を彼の成長を感じた出来事として忘れないようにして、
おうち床屋からの卒業を認めてあげよう。
そして、中年はになった昔の子どもは、
身につけた鈍感力の垢を少しこすり落として、
ナイーブさを取り戻そう。

親父床屋_小貫

 

小貫 達郎

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